知らなかった。
こんなに深くも激しく想われていた事を。
目的の為に自分を強く律した人だから、初心な私を思い、抑えていてくれたのだろう。
だから、お酒の所為とはいえ、それを知る事が出来たのは嬉しかった。
でも……
「聞いているんですか、歳三さん!」
そう千鶴は、目の前で正座をしている土方に向かい、かすれ気味の声で叫んだ。
そして、それを甘受する土方は、ほぼ寝たきり状態で叫ぶ千鶴に対し小言を口にした。
「……どうしてこういう時だけ、躊躇いなく名前を口に出来るんだ?」
「き・い・て・い・ま・す・か?」
身を起こせない、否、下半身に力が入らない千鶴は、反比例するような威勢だった。
そして、千鶴の状態に原因と責任があると理解している土方は、やはり甘受していた。
「しかも、あんなに激……いえ、私が寝込む程なのに、どうしてそんなに元気なんですか!」
と、千鶴は原因である昨夜から早朝まで及んだ行為を、言葉少なくも強く非難した。
夫婦として夜を共に過ごした事はもちろん、早朝まで事に及んだ日もあった。
土方に強く求められるのは、いつも恥ずかしがる事が多い千鶴のよろこびでもあった。
しかし、昨夜、いや正確には日付が変わった頃は違った。
久方ぶりのお酒と、千鶴という最愛の女性に酔い過ぎた土方は……
己の欲のままに千鶴の欲も煽り、夫婦の営みに慣れてきた千鶴を気絶するまで抱いた。
それでも飽く事を知らない酔った土方は、気絶した千鶴相手にも行為を続けた。
結果、意識を取り戻した千鶴は、朝餉の支度どころか、身を起こす事さえ困難になった。
「……悪かったと思っているから、こうして食事も作ってるだろ」
そう土方が弁明する様に、酔い過ぎた自覚も、原因も認めていた。
だから、千鶴が楽しみにしている食事等の家事も、意識を取り戻すまでに済ませた。
猛反省している土方の言動に対し、一通りの事を告げた千鶴は小さな溜息を吐いた。
そして、土方に対して妥協する様に、千鶴は小さな声で応えた。
「……お酒は当分禁止です」
「……ああ、わかっている」
と応えた土方は、安心したかのように正座を崩しながら小さく息を吐いた。
その際、土方の襟元が乱れ、着物に隠されていた素肌が千鶴に見えた。
その素肌に、昨夜の情事の名残を見つけた千鶴は、すぐに頬を赤く染めた。
凄まじい気勢だった千鶴が、急に頬を赤くした理由に気付かない土方は名で問いかけた。
「……千鶴?」
そう問われた千鶴は、恥ずかしさから事実を口にする事も出来ず、誤魔化す事を選んだ。
「は、いえ、何でもないです」
「そうか? なら朝餉を食べるか」
千鶴が何かを誤魔化している事は、土方にも見当はついていた。
しかし、これ以上千鶴の機嫌を損ねたくない、否、負い目がある土方は追及しなかった。
そして、その様な配慮を見せる土方に甘えた千鶴は、用意された朝餉を受け取った。
このような日が続いたら、私の身は壊れてしまうかもしれない。
でも、余り感情を曝け出さない、いえ、曝け出す事を忘れてしまった人だから……
あのように暴走する程、深く想われている事を知れたのは……
嬉しい。
そう想ってしまう自分は、どれだけ土方歳三という男に溺れきっているのだろう。
でも、それ告げたらどんな夜が待ち受けているか……いとも容易く想像できてしまう。
そして、それも甘受してしまうだろう自分も、想像する事が容易いから。
……最愛の旦那様にも秘密です。
薄桜鬼のSSシリーズのラストは土方さんとなりました。
そして、薄桜鬼にハマった要因である土方さんは……書きにくい事が発覚しました。
いえ、ネタはすぐに思いついたのですが……鬼の副長的に書けばよかったのでしょうか?
鬼畜いえ、千鶴への想いごと自分を強く律する小話とか。
ですが、ED後とお酒ネタと暴走は書いてみたかったので、小満足です。
リベンジは……年齢制限小説でしょうか?
いえ、きっちーな土方さんは……想像だけでも萌えられそうです。
そして、ハードボイルド的にやせ我慢をする土方さんには……燃えるしかないですね!