誕生日だから「ありがとう」(誕生日シリーズ5)

ビックリするかしら。

「ありがとう」って言ったら。

もちろん『アクア』にも「ありがとう」と言うわ。

『アクア』と言う名の私に『幸せ』をくれた人々に感謝するためにも。

でも、まだ『幸せ』は終わらない。

「ありがとう」も何度も言うコトになるから。

それが……『アクア』と言う名の私が消えなかった証。

だから……「ありがとう」

私に『幸せ』をくれた『人』と『アクア』の私に。

 

 

 

リビングでマリンと葵を待っているアクアは、同じリビングにいるブルーに問いかけた。

「ねえ、ブルー。ありがとう、って言ったら驚く?」

「理由がないから、やっぱり驚くよ。だから理由を聞いても良い?」

そう言いながらも、ブルーは慌てた様子もなくアクアに答えた。

だから、アクアも取り繕う事はせず、ただ思った事を口にした。

「ただ、そう思っただけ」

「……マリンや葵にそう言っても、驚くと思うよ」

そこまで言われたアクアは、ブルーに意図を気付かれたと気付いた。

それ故に、アクアは上手く纏まらない本音を言葉にした。

「……理由がないワケじゃないのよ。ただ、時期外れかなって思うだけで」

そういう、アクアの気持ちを重んじてか、ブルーはただ黙って言葉を促した。

「ブルーは待ってくれたでしょう、私が『幸せ』になるまで。だから、ありがとうだけじゃ足りないんだけど」

という、アクアの本音を久しぶりに聞いたブルーは、ただ微笑んで応えた。

「でも、アクアには罪悪感なんて必要ないよ。僕はマリンと出逢えたから」

「そうね、マリンが約束を果たした上で、ブルーとの未来を選んでくれたのだから」

「うん。マリンが僕の『幸せ』になったよ」

そう言うブルーの表情は、アクアが見た事もないくらい幸せに満ちた表情だった。

それが嬉しかったアクアは、同じ喜びを感じている事をブルーに伝えた。

「私もマリンや葵たちが『幸せ』をくれたよ」

「きっと、アクアがアクアだけの『幸せ』を掴んだら、僕達の道は変わるね」

そう言うブルーの表情に陰りはなかった。

一抹の寂しさを感じさせたが、アクアの幸せを願う気持ちの方が大きいように思える。

だから、アクアもブルーを思う気持ちを素直に吐露した。

「でも、一緒に居なくても、私たちは一緒よ?」

そうアクアが応えた時、マリンと葵がリビングに入ってきた。

「すみません、遅くなりました」

「すまぬ。やはり私は家事が苦手のようじゃ」

そう言われたアクアは、先程までの空気とは違う変化に対して先に反応した。

「まあ、誰にでも得手不得手はあるものだもの、仕方がないわ」

「そうだね。僕もまだマリンに合格点をもらえていないし」

というブルーも特に表情も変えず、アクアの言葉につなげた。

先程までの会話を知らないマリンは、慌ててブルーへのフォローを口にした。

「え、えっと、ブルーさんも上手になったと思いますよ?」

「でも、調味料の間違いどころか、手順があやふやになる大雑把さは直さないとね」

「確かにそうだけど、ドーナツ以外を作ろうともしないアクアに言われたくないよ」

先程までの雰囲気とはまったく異なる、兄妹喧嘩が始まると思った葵は口を挿んだ。

「これこれ、せっかくの誕生日に兄妹で諍いをしてどうする」

「そうですよ。葵さんの言う通りです!」

葵と同じように思ったマリンも、いつものように追随した。

だが、兄妹喧嘩をするつもりがなかったアクアとブルーは淡々と否定した。

「……別にケンカに発展させるつもりはないのだけれど?」

「そうだね。それに、そろそろ明日に備えて休んだ方が良いと思うよ?」

そう言われたマリンは素直にその言葉を受け入れ、寝室へと向かう事にした。

「そうですね。じゃあ、おやすみなさい、ブルーさん」

「うむ。それでは私も寝室へ向かうとしよう」

「あ、マリン」

と、リビングの椅子から立とうとしないアクアが、寝室へ向かうマリンを止めた。

「何ですか?」

アクアの口調が愉快犯めいている事に気付かなかったマリンは単純に振り返った。

それ故に、アクアは更にニヤリという歪みを口元に浮かべてからマリンに告げた。

「今夜からブルーに夜這いをかける時は、一言でOKよ」

「え?」

「私と葵の避難先の確保は今夜から出来たから」

と言う、アクアの意図に気付いたマリンは深夜だというのに大声で悲鳴をあげた。

「へぇぇぇぇぇ!?」

と、奇声を上げるマリンを気遣う葵は、慌ててアクアを止めようとした。

「これこれ、アクア殿。何事にも順序があるであろう」

「あら、今日はブルーがプロポーズをして、マリンがOKしたわ」

そうアクアに言われたブルーは、自分の所業を思い返したが思い当たる節が無かった。

「僕、そんなこと言った?」

「……天然ってどうすれば治るのかしら?」

「アクア殿、この二人はただ約束を交わしただけだ。見守るのも妹の努めであろう?」

そう葵が、再びアクアをたしなめる様に止めようとした。

しかし、そう言われたアクアは、葵の言葉でも止まる事がなかった。

「そんなコトを言っていたら、この二人に進展なんてありえないと思うわ」

「進展すると、どうなるの?」

と、ブルーから単純に問いかけられたアクアは、答えようとしたがマリンに止められた。

「ダメです! それ以上言ってはダメです!!」

というマリンは、言葉と共に行動でも止めようとして、アクアの背後から口を塞いだ。

しかし、マリンが慌ててアクアの口を塞いでいた為、同時に鼻まで塞いでしまった。

その事に気付いた葵は、慌ててマリンにその事を指摘した。

「マリン殿、そのように両手で塞げば、息をする事すらままならぬぞ」

と言われて気付いたマリンは、即座に両手をアクアの顔から外した。

マリンから解放されたアクアは、大きな深呼吸をすると葵に感謝した。

「……もう少しでここが殺人現場になるところだったわ。ナイス、葵」

「す、すみません、アクアさん!」

と、先程までのアクアの言動を忘れて、マリンが素直に謝ると、簡単に許された。

「今日は誕生日だから特別よ」

「え? でも、私が祝われる日じゃないですよ?」

「そんなコトないわ。『アクア』という名の私を多くの人が認めるから、存在できるのよ」

そうアクアが答えた時、マリンと葵は大きく目を見開き、ブルーは微笑んだ。

「だから、私を祝う人にも感謝をする日よ」

「アクアさん……」

と、マリンは感動したかのようにアクアの名を口にした時に気付かなかった。

笑みを浮かべていたアクアの口元が、再び歪んでいる事に。

「だから、ブルーにも幸せが早く訪れるように、マリンが夜這いをすべきだわ」

「アクアさん!」

と、マリンは顔を真っ赤にしてアクアの名を叫び、さすがに葵も口を挿んだ。

「そんな発破の掛け方はないであろう、アクア殿!」

「そうね。じゃあ、ブルーがマリンを襲……」

と、懲りないアクアが更なる提案を口にした時、マリンが即座に言葉を重ねて止めた。

「ダメです、アクアさん! ブルーさんが穢れます!!」

そうマリンが強く断言した時、ブルーは悲しそうな瞳で問い掛けた。

「僕が穢れると、マリンは嫌いになるの?」

「そ、そんな事はないです! でも、その、恥ずかしいっていうか、怖いっていうか」

再び、混迷しそうな状況を打破する様に、葵が事態を収束しようとした。

「……いい加減にしないか、アクア殿。二人には、まだまだである事は明白であろう」

「……そうね。当分は見守りモードにしておくわ」

さすがに、アクアもこれ以上は、マリンをいじるのを止めようとした。

しかし、最後に天然ブルーが大爆弾を落とした。

「……僕がマリンを襲ったら結婚する事になるんでしょ?」

「はぁい?」

ブルーの言葉の意図がわからない、いや、気付きたくないマリンは問い返した。

だが、アクアはブルーの言葉を単純に『面白い』と思った。

「まあ」

「そ、そんな出鱈目、誰に教わった?」

そして、比較的冷静だった葵は、ブルーへ余計な入れ知恵をした人物を確かめた。

すると、ブルーはあっけなくその人物の名を口にしながら、更なる爆弾を投下した。

「え、シリウスだけど。あ、そういう事を出来ちゃった結婚と言うんだよね?」

と答えた天然ブルーは完全に放置され、アクアはシリウスへの報復を考え始めた。

「……シリウス、私の楽しみを奪った罪、たっぷりと後悔させてよ」

「アクアさん、その手助けは惜しみません」

そう言うマリンもシリウスへの怒りを隠そうとせず、葵は単純に呆れた。

「……まったく、あの男も懲りる事を知らんな」

「……違うの?」

と、ブルーは3人の少女達の反応から、教えられた知識に対する疑念を口にした。

「もちろんです! ブルーさん。今後一切、シリウス様の言動は信じないで下さい!!」

「今後だけじゃなく、過去も未来も永劫に、ね」

「……ブルー殿。相手を選んでから信用すべきじゃ。これは忠告ではなく警告だぞ」

「……よくわからないけど、わかったと言った方が良いみたいだね」

「聞き分けの良い兄で嬉しいわ、ブルー」

「そうです! シリウス様の言動は十中八九が嘘ですから!」

というマリンとアクアの言動から、ブルーへの詰問が始まると思った葵は頭を抱えた。

いや、それだけではなく、シリウスへの報復を話し合おうとする事が明白だった。

そして、自分もその報復に協力させられるだろう事も。

そう思うと、葵は溜息を再び突く事しか出来なかった。

「……今夜はいつ寝れるのであろうな……」

 

 

 

 

 

これにて誕生日シリーズは終了です。

ただ、シメがブルマリ?ですが……

でも、そんなアクアのモノローグ等が凄く書きやすかったです。

もちろん、それぞれのCP小説で書いていけば良いとも思っています。

ですが、2とトリプルスターのコンプが出来ていないのです。

コンプをせずに、CPを固定する事に躊躇いがある為、書けないのです。

そして現在、2とトリプルスターのコンプが出来るまで心身が回復していない為、未だに封印中なのです。

なぜ故に、2とトリプルスターはあんなに難易度が高いのでしょうか(涙)