誕生日におめでとう(誕生日シリーズ3)

誕生日。

誕生した日を祝う習慣など、私の居た国ではなかった慶事だ。

私が居た国とは理が大きく違う故、そんな日があっても良かろう。

いや、喜ばしい事だろう。

誕生日会とやらを計画するマリン殿の表情は、始終喜びに満ちていた。

そのマリン殿を、主賓のブルー殿が嬉しそうに手伝っていた。

陰で暗躍していた、もう一人の主賓であるアクア殿も楽しそうだった。

出席できずとも、陰から支える皆の表情も晴れやかだった。

……本当にこの国に流れ着いて良かったと思った。

私の生まれと役目を忘れた訳ではない。

だが、私は今、この国で生きているのだ。

そして、それを肯定させた奴もいる。

ならば、この地に骨を埋めるのも一興かと思う。

だから、私もこの誕生日とやらを楽しもうと思う。

 

 

 

不慣れなブルーが飾り付けを終えた時、マリンはテーブルに料理を並べ終わった。

そして、最後に持ってきたケーキと共にお祝いの言葉を口にした。

「お誕生日、おめでとうございます、ブルーさん、アクアさん」

「おめでとう、アクア殿にブルー殿」

と、準備を終えて席に座った葵も祝いの言葉を口にした。

なので、アクアとブルーは素直にその言葉を受け取った。

「ありがと。葵にマリン」

「僕も嬉しいよ。マリン、葵、本当にありがとう」

「しかし、こうやって生まれた日を祝うとは本当に良い事じゃな」

と答える葵は、マリンからケーキを受け取り、ブルーとアクアの分を取り分けて渡した。

そして、ケーキを運んだ事で作業を終えたマリンは、着席しながら笑顔で肯定した。

「そうですね。こういう祝い事は私も大好きです」

「ま、それは否定しないけど、誕生日が決められている必要ってないと思うわ」

そう淡々と、アクアは葵とマリンの言葉を認めつつも素直な思いを吐露した。

そして、同意見だったブルーもアクアの言葉を肯定した。

「そうだね。生まれてきた事を祝うなら、生まれた日を特定する必要はないと思うよ」

「それも一理あるが、『人』は相手との年の差などで優越も考える生き物だからな」

と、葵は人としての年長者らしく、仕方ないといった表情で説いた。

そう言われたブルーは得心したのか、話題の矛先を変えた。

「あ、マリンはどんな誕生日会が良い?」

「……祝ってもらえるのは嬉しいんですけど、私のは……」

そう答えられたブルーは、マリンの表情が悲しい理由がわからず、素直に思いを告げた。

「僕は今日、マリンに祝ってもらって、凄く嬉しかったんだ。それだけでは駄目なの?」

熱心なブルーに対して、いつもならマリンも顔を赤くしていたが、今回は違った。

マリンの過去に気付けなかったブルーは、更に言葉を重ねようとした。

しかし、そんなブルーの言葉を、やんわりと止めるように葵が口を挿んだ。

「……ブルー殿。誕生日が無かった私達とは違い、マリン殿は違う世界で生きてきたのだ。思う事が色々あるのだろう」

そう葵が告げた時、口を閉ざしていたアクアが単純に驚きの声を上げた。

「あら、葵も誕生日がないの?」

「私の場合、生まれた日を隠すのが当たり前でな。正月に皆が年を重ねるのだ」

「へえ、そんな風習もあるんだね」

と、ブルーは葵が母国の風習に興味を示した。

そこで、マリンも自然に先程までの話の矛先を変えた。

「一緒の誕生日、ですか。それは……それはそれで良いかもしれませんね」

「では、4人の誕生日を今日にでもしてみるか、マリン殿」

そう葵が提案を口にした。

それに対してアクアとブルーは即座に賛同した。

「あら、ナイスアイディアね、葵」

「それは楽しみが増えるね」

「……ごめんなさい、それは無理です」

と、マリンが再び、珍しいくらい空気を読まない素直な思いを吐露した。

「祝ってもらえるのは嬉しいんです。でも……やっぱり違う気がするんです」

頑ななマリンに対して、アクアは素直にその言葉を受け容れた。

「そう思うなら仕方がないわね。ま、祝いゴトはこれから増えるでしょうし」

「え?」

と、アクアの肯定を得られると思わなかったマリンは二重の意味で驚いた。

そして、アクアの提案に現実味があると思った葵は賛同した。

「……なるほど、ブルー殿と共に増えそうだからのう、マリン殿の場合」

「え、ええ???」

再びパニック状態になったマリンに対し、ブルーは素直な問い掛けをした。

「マリンは嫌なの?」

「そ、そういう訳ではなくて、いえ、嬉しいんですけど、まだ早いっていうか、違うっていうか」

そう慌てるマリンとブルーのやり取りを見せられたアクアは、ニヤリと口元を歪めた。

「ふふふ、小姑ライフも近いかもね」

「そうだのう、祝い事が早々に増えそうだのう」

そう葵もアクアの言葉を肯定した為、マリンは慌てて否定する様に2人の名を叫んだ。

「アクアさん! 葵さん!!」

しかし、アクアも葵もその言葉に対して答えず、ただ黙々と料理を口にした。

なので、言い募ろうとしたマリンに対して、ブルーが再び短く問い掛けた。

「嫌?」

そうブルーに問い掛けられたマリンは、否定する事も、肯定する事も出来なかった。

「……嫌、じゃないです」

「ありがとう、僕も嬉しいよ。マリンと祝う事が出来るから」

そう微笑むブルーに対して、マリンは再び顔を赤くした。

いつもの空気に戻ったと思ったアクアは、黙々と好物のオムライスを食べていた。

そして葵は、再びアクアが問題発言をしないよう、たくさんの料理を目の前に置いた。