覚悟と誘惑(ひじちづ)

唐突に千鶴から求婚された土方は新選組の鬼の副長の名に相応しい険しい視線を返した。

「本当に、俺と夫婦になりてぇなんて戯言を言う気か、千鶴?」

「はい」

「俺はおまえみたいな小娘の誘惑で絆されねぞ。おまえよりも上手く誘う女なんていくらでもいるからな」

「わかっています」

「……覚悟は本気みたいだな」

と土方も理解したように、千鶴は求婚という色事の告白に似合わぬ真摯な表情だった。

故に、土方も千鶴の想いを察したが、その様な土方の変化に千鶴は気付かなかった。

「我が儘なのはわかっています。でも、私は土方さんと夫婦になりたいんです」

「わかったよ」

「え?」

「絆されてやるて言ってるんだよ!」

そう土方が自棄になったような表情で千鶴に答えた。

それを聞いた千鶴は感謝を言葉にしようとしたが、土方からの口づけで言葉も奪われた。

「おまえに言わせてばかりじゃあ、男として問題だからな。だから、覚悟しておけ。これから俺はおまえをどんな事が有っても手放さないからな」

「はい! これからもずっとお傍に居させてください!」

「なら、これからは俺を歳三と呼べ」

と土方に告げられた千鶴は想定外な状況に戸惑った。

その様な千鶴の乙女らしい反応と甘い覚悟に対し、土方は苦笑いを隠さなかった。

「夫を名字で呼び続ける気か? 本当に後先考えてねぇな、おまえは」

「そ、うですね……わかりました、歳三さん」

「お、おう」

 

 

 

 

 

ようやく想定通りな小話となりました。

いえ、覚悟した千鶴嬢が相手だとドSな土方さんも少々鈍っているように思えますが、まあ、S対応には書けたので、想定通りといえるかと。

また、この小話の舞台はあえて未定です。

なので、屯所時代の求婚や、蝦夷夫婦の求婚事情など、お好みの設定で読んで頂ければ、と。