「僕はディアーナを特別な女性として、生涯、愛し続ける事を誓いました」
と、アルムレディンは非公式な会談の場所とした所で出迎えたセイリオスに対し、挨拶を終えるとそう告げた。
それ故に、セイリオスも形式ばかりの挨拶を続ける事なく、アルムレディンの言葉をただ聞いた。
「だから、ディアーナの兄であるセイリオス殿の『求め』にも応じましたが、ディアーナを『姫』としてお返しする事は出来ません」
「……ありがとうございます、アルムレディン殿」
そうセイリオスは、アルムレディンの言葉を聞き終えると答えた。
そう答えられる事が想定外だったアルムレディンは、セイリオスに対して間の抜けた声で問い返した。
「え?」
「ディアーナを、妹をそこまで愛し守ってくださる事に感謝します。そして、ディアーナを『姫』としようとした事を謝罪します」
という、セイリオスの言葉を聞いたアルムレディンは、落ち着きを取り戻す様に冷静かつ沈着な答えを言葉にした。
「いえ、僕にも落ち度はありましたから……お義兄様には不要な心配をお掛けし、申し訳ありませんでした」
「貴方も私をディアーナの兄と呼んでくださるのですね」
そうセイリオスが告げた意味を、アルムレディンはあえて問わずに、ただ受け入れるように応えた。
「ええ。それに、僕の運命はディアーナと共にあると信じています」
「……良かったな、ディアーナ」
と、セイリオスはアルムレディンに答えると、急に物陰の方へと視線を向けた。
すると、馴染みのある気配がある事にアルムレディンも気付いた。
いや、馴染みというより、安心する気配であったが故に、アルムレディンは今まで気付けなかった。
そして、両者の視線と気付かれた事実に降参したかのように、物陰からディアーナが姿を現れた。
些細な悪戯を叱られる子供の様な仕草で委縮しているディアーナに対し、セイリオスは『兄』として厳しく諌めた。
「非常事態とはいえ、盗み聞きは良くないな、ディアーナ?」
「……ごめんなさい、お兄様」
「おまえは少しでも早く、『王妃』としてふさわしくなるよう、更なる努力をすべきだ。それが、ダリスの新王に即位されたアルムレディン殿の支えとなるのだから」
「……はい、ですわ」
そう従順な答えを言葉にするディアーナと、叱りつつも気遣いを忘れないセイリオスの慣れた諌め方を見守っていたアルムレディンは、軽い嫉妬を感じつつも場の雰囲気を変える事なく、穏やかな口調で口を挿んだ。
「……本当にセイリオス殿下とディアーナは仲が良いのですね」
「そうですね。それに、私の運命もディアーナに導かれたと信じていますから」
「お兄様……」
「……妹を思うが故の『願い』に応じてくださり、ありがとうございました」
とアルムレディンに告げたセイリオスは、ディアーナに対する雰囲気とは違う、『王』と呼ぶに相応しい言動へと変化させた。
その変化を良い機会だと同意したアルムレディンも、セイリオスに対しての言動を切り替えようとした。
「いえ、ディアーナと共にある為ならば、どのような試練も運命も受け入れ、全てを乗り越えたいと思っています」
「アルム……」
「では、またお逢いする時には、互いに『王』として尽くし合いましょう」
そうセイリオスが告げ終えた時、アルムレディンに対して握手を求めた。
それ故に、アルムレディンも『国王』に相応しい堂々とした態度で応じた。
「ええ。ダリスはクラインから受けた恩を忘れません」
「クラインもダリスとの友好を続ける為に、誠心誠意を尽くします」
すみません。本当にわかりやすい王道でお約束なネタとオチですが、萌えの傾向はいまだ変わらず……同好の方の反応をお待ちしてます!