without protesting

 

「幼馴染みに戻らないか?」

 

そうロイロイが言ってから1週間。

『幼馴染み』としては当たり前な距離が、私には凄く新鮮で楽しかった。

でも、ロイロイは明らかにイライラしてる。

ロイロイは無自覚だけど……

 

 

ここ1週間、ロイはサボることがなかったが、仕事は遅々として進まなかった。

ホークアイが拳銃で脅しても、まったく効果がなかった。

机に座ってペンを握っていても、ロイの手も頭もまったく動いていなかったから。

「中佐、いい加減にしてください」

「……」

「中佐?」

そう問い掛けたホークアイは、ロイに突きつけている拳銃のトリガーを握る指に力を入れた。

マジで発砲する5秒前であることに気付いたロイは冷や汗を流しながら言った。

「わ、私はサボっていないだろう!」

「では、目の前にある書類は3時間もかける程のモノなのですね?」

「うっ……」

言葉に詰まったロイが焦っている時、執務室のドアが開いた。

「中佐、仕事の追加っスよ」

そう言って、ハボックが書類の山を抱えて入ってきた。

ノックもなかったことに対してロイが口を開こうとした時、ハボックの書類運びを手伝っている人物を見つけた。

「ユイラ!」

と、ロイは救いを求めるような視線をハボックの後ろにいるユイラに向けた。

ロイの意図に気付いたホークアイはキッパリと言い切った。

「中佐、今回はセラブ中尉の助っ人を許可できません」

そう言ったホークアイがユイラに書類の一部を差し出した。

なので、ユイラは素早く書類に目を通してから言った。

「ゴメン、これはロイが処理しなきゃダメだよ」

「ユイラ……」

「つうか、こんな書類、中佐ならすぐじゃないんスか?」

そうハボックが言うと、ユイラとホークアイは溜め息をついた。

「いつまでも嫉妬ですねるなんて中佐らしくないすよ」

という、ある意味では見当違いなハボックの言葉は、ロイが忘れていた嫉妬を呼び起こした。

「……そうだな。では覚悟があるのだな、ハボック准尉?」

「は?」

「上官であるセラブ中尉に書類運びを手伝わせ、その恋人の執務室へ一緒に来たのだからな?」

と言う、ロイの黒いオーラに気圧されたハボックは慌てて言った。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。中佐!」

「私は優しいから焼き具合は選ばせてやろう。希望を言いたまえ」

「じょ、冗談すよね?」

問い返すハボックの問いに対して、ロイは答えずに発火布を身に着けた。

それを見たハボックは真っ青になった。

なので、ユイラは溜め息をついてから口を挟んだ。

「私から言ったの。それはロイも気付いてるんでしょ? 勘違いな嫉妬に逃げてる場合なの?」

「……ハボックをかばうのか?」

「事実を言ったの、私は」

あきれを隠さないユイラへロイは矛先を向けた。

「では命令だ、セラブ中尉。今すぐにこの書類を片付けたまえ」

「……ただのイヤミならいくらでもやるけど、今回はダメ」

「上官命令だ」

というロイの無茶苦茶な言葉に対して、ユイラは盛大な溜め息をついてから問い掛けた。

「……じゃあ、等価交換で浮気してくれる?」

「は?」

「明日がロイロイの可愛い恋人の誕生日なのを忘れたの?」

と言ったユイラの言葉から、意図を察したロイは拒否を口にした。

「……仕置きが目的か? 私に襲われる趣味はない。プレゼントは店で買えるものにしろ」

「えー、最近ロイロイを愛してあげられなくて、ストレスが溜まっているのに」

「お前の歪んだ愛情など要らん。それに、お前は楽しんでいたようだが?」

「そうかもしれないけど、ロイロイの方が素直じゃないからいいの」

「何を言っている。私は女に襲われる趣味などない」

と言うロイは、それを証明するかのように書類を処理しはじめた。

なので、ユイラは更に言い募った。

「えー? ロイロイってば、私の愛が足りなくてイライラしてたんでしょう」

「人を変態にするな! 仕事の邪魔だ。退室したまえ、セラブ中尉」

と、ロイは言いながら処理速度を上げた。

なので、ユイラはロイに対して敬礼を返した。

「Yes sir lieutenant colonel mustang」

そう言ったユイラはロイの命令通りに退室した。

そんな2人のやりとりを静観していたハボックはつぶやいた。

隣にいるホークアイでも聞き取れるかがわからないような小さな声で。

「さすがっスね、セラブ中尉は」

「ええ。でも、もう少し早くしてほしかったわ」

ホークアイは溜め息をつきながら応えた。

そんな2人のやりとりを耳聡く聞いていたロイはこめかみを引きつらせながら言った。

「……私の邪魔をする気なら2人も退室しろ」

ロイに怒りを向けられたハボックとホークアイは、ユイラと同じ様に敬礼をして退室した。

 

 

 

数日後、事の顛末を知ったヒューズがロイに電話をかけてきた。

そんなヒューズとの会話は、ロイにとっては家族自慢よりも聞きたくない話だった。

ひとしきり笑った後で、ヒューズは真面目な声でロイに尋ねた。

「なあ、ロイ。東の島国の男が他国に行った時、困ることを知ってるか?」

しかし、ロイは怒りからヒューズの変化に気付くことが出来なかった。

「そういうことはファルマンにでも聞け」

「米が食えなくなることらしいぜ」

と言う言葉で、ヒューズの変化に気付いたロイは真面目に問い返した。

「こめ?」

「東の島国の主食らしいな、米ってヤツは。で、それを毎日食べてるらしい。女性は他国の料理を美味しいと感じて適応できるらしいが、男には難しいらしい」

「……」

「男は生まれ持った環境の中で育んだモノを守りたがるもんだからな」

「そうかもしれんな」

「……だから、ロイ。お前との仲も今日までだ」

と言ったヒューズの意図がわからないロイは間の抜けた声を返した。

「は?」

「俺は変態を親友に持つ気はない」

「私は変態ではない!」

「だって、ユイラの歪んだ愛情が『そう』なんだろ?」

そう言われたロイは言葉に詰まった。

「ロイ。何事も素直になった方がいいぞ?」

「私はあいつとは違う!」

 

 

 

 

 

過去にサイトを通じて知り合った方への捧げ物でした。

一応、自サイトへのUPは過去に許可を頂いていますが、今回はその方へ確認等が出来ない為、捧げた方の名前は非公開で。

あと、題名の和訳は『素直に』で、これは単純にあの方へ(笑)