「求婚」

戦争が終わり、新選組の土方歳三が戦死してから一年が過ぎた頃。

ようやく傷も癒え、体調も万全となった頃、ふと土方は風間が口にした名を言葉にした。

「薄桜鬼、か」

「土方さん?」

「いや、俺の名も変えた方が良いだろうから……雪村歳三っていうのはどうだ?」

そう土方から問われた、否、求婚をされた千鶴はまっすぐな視線を返しながら泣いた。

その涙の意味が分からない、否、答えが知りたい土方はただ千鶴の身を抱き寄せながら問い続けた。

「答えはくれねぇのか、千鶴?」

「有り難うございます。でも、私は土方さんのお傍に居られるだけで……」

と千鶴がただ自身の思いだけを告げようとした為、土方はそれを静かに遮った。

「千鶴」

「……はい」

「俺は好きな女を幸せにも嫁にも出来ない不甲斐ない男になる気はねぇが……おまえはそんな男が良いっていうのか?」

「土方さんのお傍に居られるだけで、私は幸せです」

「じゃあ、俺が雪村歳三になる事に異論はないんだな?」

その様な土方の直球で話を逸らせない強引な問いに対し、千鶴はあえて逃げ道を作ろうと足搔いた。

「えっと……これからは『土方さん』と呼べないのですか?」

「お前は夫を名字で呼び続ける気か?」

「ですが、ひじ……」

そう千鶴が更に足搔こうとした為、土方は抱き寄せていた身体をさらに密着させてから顎をつかんで上向かせた。

「歳三だ。まさか俺の名を知らないとでもいう気か?」

「……無理です。いきなり名前で呼べだなんて無理です!」

「なら呼びたくなるようにするだけだ。良かったなぁ、今が夕餉の後の夜で」

「今からは明日の準備もあります!」

「なら、俺に背を向けるか?」

という土方の問いは、千鶴との出会いを強制的に思い出させた。

同時に千鶴の想いも察していると、否、土方の問いへの答えを知っていると通告した。

「お前の覚悟はその程度か?」

「卑怯ですよ……歳三さん」

「そんな事は知っているだろう? 俺は目的の為なら手段は選ばねぇからな」

そう土方が告げると、千鶴は足搔く事を止めてからそっと身を委ねた。

それが答えだと思ったが、更に千鶴の言葉を強請る様に土方は自身の想いも告げた。

「愛している、千鶴」

「はい……私も愛しています」

 

 

 

 

 

今回の連続更新はこれにてラストとなります。

また、この話のきっかけには風間さんの言葉がきっかけですが、小説では名前だけの登場なので、今作は土方ED後としました。