独占禁止!後編

「告白」の続きとなっています。

 

 

 

マリンと葵が家を出てから1時間後。

ブルーとアクアは会話する事なかったが、居心地が悪そうでもなかった。

ただ、2人でいる事が普通で、あえて会話する理由も、沈黙を続ける必要もなかった。

だから、ブルーはあえて言葉を口にする事もなく、それ故にアクアは溜め息を吐いた。

「……ブルーって本当に『おとこ』なの?」

そうアクアに問われた、否、断言をされたブルーは、問いの意味がわからなかった。

あまりにも変わらないブルーの反応に対し、アクアはあきれ返った視線で問い続けた。

「……『すえぜん』が『かもねぎ』状態でも手も出さないなんて……『ふのう』なの?」

「……ごめん、アクアが言う言葉の意味がよくわからないんだけど?」

というブルーの問い返しは、アクアにとって想定内で不機嫌さを上げる答えだった。

だが、ブルーの意識調査をする為にあえて問うたアクアは、不機嫌なまま問い続けた。

「……目の前に『おむらいす』があるのに、わたしが食べないと言ったらどう思う?」

「それは……驚く、かな?」

「……だからブルーはダメ男なのよ。マリンを他の男に奪われても良いの?」

そうアクアに断言されたブルーは、ただ戸惑いながらもしっかりとした声で問い返した。

いや、アクアの意図がわからないが故に、ブルーは断言された未来を否定しようとした。

「それを阻止する為に僕はマリンと恋人になったよ?」

「……『かたち』はね」

というアクアの答えは、やはりブルーにとっては意味がわからなかった。

それ故に、ブルーはアクアの意図と断言された未来を回避するすべをただ問うた。

「形?」

「そう。今のブルーとマリンは『かたち』にこだわり過ぎで、『かたち』に安堵しすぎ」

「……でも、マリンを独占するには必要だと言ったのはアクアだよ?」

そうブルーが問う事も予測していたアクアは、想定内であるが故の溜め息を吐いた。

それでも、ブルーはアクアの言葉も意図も分からずにただ困惑した。

今まで、アクアが『しあわせ』を求めた時とは違う、相違に対して不安にもなった。

だから、アクアはただブルーの不安だけを払拭するように『こたえ』だけを言葉にした。

「誰も『かたち』だけで『まんぞく』するなんて思いもしていないわ」

「じゃあ、アクアは僕達に何をさせたいの?」

「……わたしが、ではなくて、ブルーが何をしたいか、だわ」

というアクアの言葉は、やはりブルーにはわからなかった。

いや、ブルーにはわからないのではなく、ただ知らないだけだとアクアは判断した。

それ故に、アクアは諭すような口調で、大きな溜め息を吐きながらブルーに応えた。

「マリンを独占するには『じつりょくこうし』も必要だと言ったのに、ブルーは手を出す気配が無いし……妹にこんな心配をさせる兄なんてブルーくらいだわ」

「そうなの?」

「ブルーくらいの外見年齢の男なら、ね」

そうアクアに断じられたブルーは、さらなる不安から、ただアクアにそれを問うた。

「……それはマリンも?」

「……ブルーと視線を合わせるだけで真っ赤になる『おとめ』には『むりなんだい』だとは思わないの? まあ、ブルーが押し倒せば、マリンも流されるでしょうけど」

「……僕がマリンを押し倒す?」

と答えるブルーは、ただ人間離れした清々しさと無垢さをアクアにも感じさせた。

それ故に、その様な反応をするブルーに恋したマリンを思ったアクアは、ただ憂いた。

そして、アクアはこれから起こる、否、起こらなくてはならない事態を提示した。

「……ちなみに、『じつりょくこうし』をする気があるなら、わたしと葵は家を出るから安心して」

そうアクアに告げられたブルーは、ただ確実に起こるだろう未来を否定しようとした。

「それは安心が出来ないよ、アクア」

「マリンの精神安定を優先するなら、4人で暮らしながら『じつりょくこうし』は無理よ」

「……僕はマリンを独占したいけど、4人で暮らす『今』を手放す気はないよ」

「……じゃあ、わたしと葵に好きな人が出来て、2人暮らしがしたいと思っても?」

というアクアの提起は、ブルーにとっては想定外かつ予測不可能な未来だった。

「え?」

「今すぐに2人暮らしを希望したりはしないけど、そういう未来はあるのよ、ブルー?」

「……」

「答えは決まって、ブルー?」

そうアクアに問われたブルーはただ瞳を閉じた。

そしてその様な応えを見せるブルーに対し、アクアはただ答えを待った。

数分後、意を決したブルーは閉ざした瞳を開き、まっすぐな視線と共にアクアに答えた。

「うん。なら僕は……」

 

 

 

マリンが渾身の力作として4人分のオムライスを夕食に用意した。

そのオムライスの素晴らしさ故に、アクアは黙々と『おかわり』を食べ続けた。

そして、葵も感嘆を口にしながら嬉しそうに食べた。

だが、この場で一番嬉しそうなブルーはなぜかマリンを多く見ていた。

その視線が嬉しくも恥ずかしいマリンは、ブルーにその視線の多さの意図を尋ねた。

「……あの、ブルーさん?」

「?」

「私の食べ方、変ですか?」

「そんなことないよ。とても可愛いと思うけど?」

と言うブルーが満開の笑顔でマリンに答えた。

その笑みに魅せられたマリンは撃沈し、ただ周囲に助けを求める様に視線を向けた。

だが、その様な2人のやり取りに対して葵はただ感心し、アクアはニヤリと笑った。

それ故に、マリンはアクアの策略なのかと問う様な悲鳴に似た叫びを言葉にした。

「アクアさん!」

「……わたしは何も言ってないわよ?」

「無論、私もな」

そうアクアと葵が言葉にした為、マリンはただ硬直するしか出来なくなった。

その様な三人娘の言動を見ていたブルーは、ただアクアに告げた言葉を再度口にした。

「……ねえ、アクア。やっぱり僕は『独占禁止』にしようと思う」

「……ブルーらしいと思うけど、『よく』が無さ過ぎるわ」

「そうかのう……ブルー殿らしい、欲張りな選択だと思うが?」

と、葵はアクアの意図を否定しつつもブルーを支持した。

だが、3人の会話の意図がわからないマリンはただ首をかしげた。

そして、それに答えるつもりのないアクアは葵の言葉を肯定した。

「そうね。確かにわたしと葵も欲しいなんて、ブルーは欲張り過ぎるわ」

そうアクアが告げた内容は、マリンに不安と疑惑を抱かせた。

それ故に、マリンは不安と疑念に潰される様な気弱な声で意図を確かめようとした。

「え? それってどういう意味ですか!?」

「……安心して、マリン。ただブルーは今の状態が壊れる事を望まない、というだけよ」

「今の状態……?」

「4人で暮らす『いま』が壊れるようなマリンの独占より、マリンの気持ちに沿いながら『いま』を暮らしたい、という意味だわ。だから今夜も安心よ」

というアクアの答えは、あまりマリンを安心させる事は出来なかった。

そして、あえてそう答えているアクアに対し、ブルーは不思議げに、葵はただ苦笑った。

「……つまり、どういう意味ですか?」

「マリン殿との関係を急に深めて独占するよりも、今の関係を続けたい、という意味ではないか?」

「そうだね。マリンが僕の視線だけで真っ赤になる姿も僕は好きだからね」

そうブルーが直下型の爆弾を投下した為、マリンは再び撃沈しながら硬直した。

その様な乙女らしいマリンの反応と、ブルーの天然で裏の意図がない言動に呆れた。

「……ほんと、ブルーって天然の『たらし』よね」

「マリン殿も無意識では似たようなものだろう?」

「じゃあ、ブルーとマリンは似た者同士、なのね」

「……たらし?」

と、ブルーは自身の言動へのアクアと葵の評を不思議そうに問うた。

そして、マリンはただ赤い顔のまま、アクアと葵の評を強く否定した。

「そ、そんなコトはないです!」

「ま、自覚が無いところもお似合いだわ」

そうアクアはブルーとマリンの言葉を却下し、葵は苦笑いながらも場を収めようとした。

「……とりあえずは独占禁止法成立、と言ったところかのう」

「そうね、ブルーらしくてマリン優先といったところかしら?」

「うん。僕も賛成かな。で、マリンは嫌……かな?」

と、ブルーに問われたマリンは、無理に体を動かしながらも不安げに問い返した。

「そ、そんなことないです! で、でも、良いんですか、ブルーさん?」

「ま、ブルーは『すえぜん』も『かもねぎ』にも興味が無いみたいよ?」

そうアクアはマリンの不安とブルーの無意識行動に呆れつつも助言を言葉にした。

だが、アクアの言葉の意味がわからないブルーはただ不思議そうにそれを聞いた。

そして、言葉の意味がわかるが故に、マリンはさらに動揺を隠せなかった。

それ故に、アクアは更に呆れ、葵は再び苦笑う事しか出来なかった。

だが、その様な3人娘の言動の意図に気付けないブルーはただ決意を言葉にした。

「……僕はただ『今』が続くとは思わないからこそ、『今』を大切にしたいって思うんだ」

「わ、私も!」

「?」

「私もアクアさんと葵さんと一緒にいられる今も大切にしたいと思っています!」

とマリンは、あえて直球でブルーの意見と想いを支持するように笑顔で断言した。

その笑みを見たブルーも満面の笑みをマリンに向けた。

「うん。僕も同じ気持ちだよ、マリン」

「ブルーさん……」

そう照れながらもブルーに応えるマリンの変化に気付いたアクアと葵は苦笑った。

「……2人暮らしとなる日は意外と早くなるかもしれんな」

「そうね……お互いに『むじかく』だから時間はかかりそうだけど」

 

 

 

 

 

「独占禁止!」は短編としてUPする予定でしたが、前後編となりました。

いえ、詰め込みたいネタを積み重ねた結果、SSにしては長くなりまして。

なので、今回は前後編としてUPする事となりました。

ただ、前後編とするには少々短く、SSにしては長い小説ですが……