「応援」

月森の無言の気遣いと土浦のお悩み相談室では浮上できなかった香穂子を見かけた加地はあえてハイテンションな問いかけをした。

「日野さんがどんなに悩んでも、僕はずっとファンという特権を手放さないし、友人でもあり続けるよ!」

「そうだねぇ……私も友人としてもそばにいるよ。ただ、報道部員としては香穂には色々と活躍してもらって、ネタも提供してくれる事は期待してるけど」

そう加地に取材をしていた天羽も香穂子の背を押す様に告げると、香穂子は加地と天羽に答える様に現状の端的に説明する様な問いを返した。

「やっぱり、音楽に関するアドバイスは私よりも柚木先輩を頼りたくなる、よね?」

「……あーそういう事か」

と天羽は香穂子の悩みを的確に理解したが、同時に理解した加地はあえて反論した。

「そんな事ないよ!」

「いや、そんな事あるでしょ」

「日野さんの音楽の素晴らしさを知れば……」

そういう加地の変わらぬ主張、否、呆れさせるしかない天然な発言を天羽は止めた。

「はいはい。信者の意見は要らないから」

「やっぱり、柚木先輩が……」

「そう言って柚木先輩からも逃げたのか」

「……」

「とりあえず、柚木先輩と仲直りしてくる方が優先だと思うけど?」

という天羽から鋭いくも思いやりに満ちた助言を聞いた香穂子は自身の言動を省みた。

「……とりあえず、あってくる」

「そうだね。仲直りは早めがいいよ」

「ありがとう」

そう答えた香穂子は落ち込んでいた様子から立ち直ってからすぐに場から辞した。

それを笑顔で見送った天羽はあえて会話に加わらなかった加地の意図を確かめた。

「……で、急に無言となった日野さん信者はどうしたの?」

「今は僕の意見よりも冷静な指摘の方が必要だからね」

「だから、あえて信念を告げて私に言わせたのか」

「ご想像にお任せするよ」

「あーそうですよねぇ。ほんと、厄介な人達に好かれてるわね、香穂は」

という天羽が再び鋭い指摘をすると、加地は答える事なくそれ以上に鋭い指摘を返した。

「それは同類だとわかってて言ってる、天羽さん?」

「……香穂の写真、要らない?」

「だから、僕は日野さんには何も言っていないよ?」

そう答えた加地は満面の笑みを見せたが、天羽はその笑みの意味を知っていた。

故に、天羽は加地に答える事なく、ただ香穂子を見かける前にしていた取材を再開した。

 

 

 

 

 

再びですが、天羽が加地にしていた取材の内容は是非スルーで。

でも、天羽と加地の会話って……柚木先輩と加地の会話並みに得体が知れないと思うのは間違いじゃない!と思っています。