「なあ、この菓子を売ってる店は店頭限定のモノもあるから、今度一緒に行かないか?」
「有り難う、平助君。でも、平助君に迷惑をかけられないから」
「噂なんて俺は気にしないし……」
そう平助が更に千鶴を誘おうとすると、仕事に追われ続け休憩も出来ない鬼の副長が場に割って入った。
「千鶴が気を使っていると思えるうちに引き下がるのも良い男の条件だぞ?」
「!」
「お疲れ様です、土方さん。おにぎりとお茶をお持ちしましょうか?」
「いや、それは必要ねぇ。今夜は夕餉を食べられるからな」
「わかりました。では、私は今日も食事当番なので、土方さんもお好きな江戸の味にしますね」
という土方と千鶴の会話は甘くないのに、夫婦めいた意思疎通の深さが、平助を落ち込ませた。
そう。
平助は千鶴への恋心を自覚しているが故に、土方との関係を見せつけられたのが辛かった。
そして、土方はそれを意図的に見せ、千鶴は無自覚だった為に、平助は更に追撃された。
「平助君?」
「土方さんの鬼!」
「……俺が鬼でもいいのか、千鶴?」
「私は土方さんだからお傍に居たいんです」
そう千鶴が断言すると、土方は「そうか」とだけ短く答えるように呟いた。
故に、千鶴はただ静かでも深い想いを感じさせる視線で、自室へ戻る土方を見送った。
今作を書いていても……へいちづは無理、と思いました。すみません。
ただ、SSLの様な幼馴染み設定は美味しいと思うので、そういう登場はアリかなと思うのですが……どうでしょう?