「なあ、斎藤と千鶴ちゃんが付き合っているっていう噂は本当なのか?」
そう永倉は夕餉の途中で世間話のように問いかけた。
だが、その様な噂の真偽を土方がいる場で確かめられる事が想定外だった斎藤はむせた。
そして、常に冷静な斎藤がそこまで驚いた事に仲間といえる幹部達はさらに驚いた。
「は、一君、大丈夫?」
「新八!」
「お、俺はただ噂を確認しようと……」
と永倉は自身の失態といえる問いを正当化しようとすると、常に控えめな言動をしている千鶴が断言した。
「私が斎藤さんと恋仲なんて、斎藤さんに失礼ですし、私は想う方の傍に居られるだけで充分ですから、噂は噂です」
「そんな事はないぞ、雪村君! 君の様な気量の良い娘を娶る事は自慢の種だ。そうトシも思うだろう?」
そう近藤は千鶴の控え目すぎて自虐めいた断言に対して積極的に否定したが、話を振られた土方はあえて何も答えずに食事を続けた。
「ふーん。土方さんは近藤さんの温かい配慮を否定する気ですか?」
「……女の好みなんて人それぞれだ。あと、近藤さん、悪いが急な仕事を思い出したから、後は頼む」
「敵前逃亡なんて土方さんらしくない弱気な言動ですね?」
「俺に仕事をさせない気か、総司?」
「副長のお仕事を邪魔するというのか、総司?」
「あれ、もう復活したんだ。流石は一君だね」
という双璧の日常といえる衝突が始まろうとした時、再び千鶴が2人の殺気も制した。
「駄目です!」
「え?」
「何故に駄目だと言う?」
「私も想う方の邪魔は止めます。だから駄目です」
「……わかったよ。千鶴ちゃんがそう言うなら」
「……俺も副長の邪魔をするのは本意ではない」
そう沖田と斎藤が互いの主張を取り下げると、千鶴は静かに箸を持って食事を続けた。
「……千鶴、すげぇ」
「恋する江戸の女は強し、だな」
「……江戸の女なんて京にも多いだろ?」
「人の恋路は邪魔するもんじゃないよ、永倉君」
「そうか、俺としたことが無粋だったな。すまん、トシ」
という三馬鹿と井上と近藤からも生暖かい視線も向けられた土方は眉間にしわを寄せながら静かに自室へと戻る事を主張した。
「……俺は仕事に戻る」
ひじちづ+斎藤というより、ひじちづ+新選組幹部という表記が正しい気が……
ですが、PS2の斎藤さんルートは多くのキャラが絡むストリーなのでこれも「アリ」かと。