「慕う」

今日も土方を意図的にからかってから煽った沖田を千鶴が戸惑いながらもおさめた。

その様な恒例行事に幹部達は慣れた為、騒動が落ち着くとすぐに持ち場などに戻った。

そして、千鶴は沖田が土方に絡む理由も拙い仲裁でおさまる理由が理解できなかった。

だが、それも見抜いている沖田は一息をついた千鶴に絡む様に問い掛けた。

「なんで、僕が君の制止を聞くか、知りたい?」

「理由があるんですか?」

「うん。僕も片思いだからね」

「え……」

「そんなに驚くこと?」

「いえ、沖田さんに想う方が居るとは知りませんでした。すみません」

そう答える千鶴は純真だった為、悪意から問い掛けた沖田は苦笑いながら答えた。

「そうだね。君も知ってる人なのに、気付かないなんて酷いね、君も」

「私も知っている人、ですか?」

「うん。それに、僕が幼少の頃からだから、君の先達だよ?」

「……日野で待っている方がおられるんですか?」

「土方さんには許嫁も居たけど、僕は違うよ?」

という沖田の問い返し、否、土方の許嫁の存在を知った千鶴は絶句した。

それも想定内な千鶴らしい反応だった為、あえて沖田は千鶴への配慮を言葉にした。

「あ、土方さんは婚約を自力で解消したよ。だから、千鶴ちゃんは安心してね?」

「……」

「そんなにショックを受けるとは思わなかったよ。なら、勘違いも指摘してあげようか。僕の片思いの相手は近藤さんだよ」

そう沖田に告げられた千鶴は、絶句していた表情をすぐに引き締めると、生真面目で真っ直ぐな視線を返した。

その様な千鶴の言動が気に入っている沖田も少しだけ率直に自身の思いを言葉にした。

「近藤さんは僕にとって敬愛する人だけど……僕は近藤さんの思いに応えられない。近藤さんの思う『沖田総司』では在れない」

「……近藤さんは、きっと、沖田さんと共に居る事が喜びだと思います。私も土方さんの近くに居られるだけでうれしいと思いますし」

「……先達の僕に教えるなんて、千鶴ちゃんも生意気になったね?」

と千鶴に沖田が問い返すと、千鶴は戸惑いながらも沖田の機嫌を悪くしたと思って謝罪した。

だが、その様な千鶴の言動は予測済みで想定内だった沖田は、放置をする様にからかいながらも自室に戻った。

そして、沖田が去ってから洗濯が途中だった事を思い出した千鶴は洗い場へと戻った。

 

 

 

 

 

久方ぶりの薄桜鬼新作はひじちづがメインの小話となりました。

ただ、今作は……ひじちづ?という様に土方の名前だけの登場ですが、千鶴の想い人として登場しているので、一応、ひじちづ+沖田という表記とさせて頂きました。