年始を間近に控えた年末、新妻であるリリーナは深く悩んでいた。
否、夫となったヒイロと過ごす年末は忙しくも充実していたが故に、大晦日になった時、リリーナは自身の失態に気付いた。
「……ごめんなさい」
「謝罪に値する理由がない」
「でも、私が間違っていました」
「俺が同意したことも間違いだと?」
そうヒイロが冷静に見える表情だったが、強い憤りを感じさせる険しい瞳だった。
だが、その様なヒイロに対してリリーナは自身の発言を取り消す事なくただ主張した。
「だって……1月1日の年始をヒイロの誕生日にすると断言したのは私だわ!」
「そうだな」
「きっと、ヒイロは自分の誕生日をすぐに忘れるって思ってたから……」
「誕生日は重要な個人情報だ。忘れるわけがない」
「ええ。私も夫の誕生日を忘れるなんて失態はしたくなかったけど……年始を祝うべきか誕生日を祝うべきかを悩む事になるなんて、想定外の失敗だわ!」
というリリーナの発言、否、後悔に対し、ヒイロは否定も肯定もせずにただ淡々とした口調で提案をした。
「一緒に祝えばいいだけだろう」
「え?」
「年始も誕生日も祝う事に変わりはない」
そうヒイロから提案されたリリーナは瞳を大きく見開いてから満面の笑みをみせた。
「……そうですね。では、まずは誕生日ケーキを焼きますわ!」
「なら、俺はメレンゲをつくる」
「はい。一緒に祝えるって素敵ね、ヒイロ」
とリリーナが告げても、ヒイロは手馴れた様子で卵白を泡立てた。
そして、その様なヒイロの隣で、リリーナは楽しげに材料の計量を始めた。
久方ぶりのヒイリリ新作は「ふろーずん」の後日談という捏造小話となりました。
また、次に更新する新作はTVシリーズ最終回後の捏造小説となります。