理事長室から教室に戻ろうとした香穂子は渡り廊下で柚木と数日ぶりに再会した。
故に、柚木は香穂子を逃さぬように腕を掴んでから屋上へと向かった。
また、柚木に腕を掴まれた香穂子はあえてそのまま共に屋上へと歩いた。
そして、誰もいない屋上についた直後、柚木は香穂子に宣言をした。
「はっきり言っておく。俺の隣もお前の隣も、誰にも譲る気はないからな」
「……」
「ご不満?」
そう問うた柚木は互いの身体の距離を近づけると、まっすぐな視線を香穂子に向けた。
それ故に、香穂子も真っ直ぐな視線と共に柚木への不満と疑念を言葉にして問い返した。
「……なら、どうして嫉妬してくれないんですか?」
「どうして嫉妬にこだわるんだよ、おまえは」
「じゃあ、告白してくれますか、私への想いを」
という香穂子の答えを聞いた柚木は、ようやく香穂子の苦悩に気付くと口元を歪めた。
そして、理解したが故にあえてストレートに応える気がない柚木は、香穂子とキスが出来るくらい間近な距離で甘く囁いた。
「確かに嫉妬は愛情のバロメーターと言うし、恋人関係である事は隠しているが、今は想いを隠す必要はないぜ?」
「え……」
「二人でならいくらでも愛を告げ合えるし、確認も問題ないだろ。だから、俺に告白したいなら……いくらでも、どうぞ?」
そう香穂子に告げた柚木は、意地の悪さを感じさせるが、素といえる笑みを見せた。
その笑みが当たり前となった香穂子は、互いの顔の距離が近い事に戸惑いながらも、柚木に強く願いを伝えた。
「ここは愛を告白すべきです、柚木先輩から!」
「そんなに軽く告白してたら、加地の様に信用されなくなるし、もったいないだろ」
「……そんなに加地君が嫌いですか?」
「二人の時に、他の男の名を口にするような恋人には、愛を告白したいとは思えないぜ?」
「他の男の名を先に口にしたのは柚木先輩です。そして、私は柚木先輩だけだから、いつでも好きだと言いたいですし、好きだとも聞きたいです」
という香穂子の強い願いを聞いた柚木が綺麗で魅了される様な艶やかな笑みをみせた。
そして、その様な笑みには慣れていないが故に戸惑う香穂子の顔に柚木は片手を添えた。
その手が唇に触れた時、香穂子は反射的に瞳を閉じた為、柚木はすぐにデコピンをした。
「……痛い」
「まだ先は長いし、長くなるんだろ? なら、特別は秘めて大切にすべきだ」
「柚木先輩は意地悪です」
「それが良いんだろう、香穂子?」
そう柚木が耳元で甘く囁くと、香穂子は告白された時よりも真っ赤な表情となった。
また、その様な香穂子の反応を想定していた柚木は素の笑みで再び唇に片手で触れた。
「愛情表現は言葉だけじゃないってわかったか?」
「柚木先輩の……馬鹿、愛してる!」
「ああ、知ってるよ、香穂子」
と柚木が香穂子に答えた為、香穂子は真っ赤な表情で柚木に抱きついた。
そして、抱きつかれた柚木は香穂子の身体を強く抱きしめ返した。
これにて初のコルダ創作は終わりとなります。
最後までお付き合い頂き、有り難うございました!
とりあえず、書きたい事は書けたので、この後の更新は……未定です。
反響や感想等の反応次第、とも言えますが。