告白

「ブルーさん、付き合ってください!」

「うん、いいよ」

騎士院での仕事、いや、人間への訓練終了後にこの会話がなされた。

大勢の騎士達がいる中で、真っ赤になりながらも大声で告白したマリンと、それを平然と受け容れるブルーに、一同は驚きを隠せなかった。

と、同時にアロランディア中の噂になった。

 

 

 

告白

 

 

 

マリンがブルーと会話した翌朝、いきなり葵にこう問い掛けられた。

「マリン殿、ブルー殿と付き合ったとは本当か?」

「え? どうして知っているんですか??」

葵に問い掛けられた内容と意図がわからないマリンは問い返した。

余りにマリンらしい返事に対して、葵は意図を明らかにした。

「昨夜、騎士院で告白して交際をするようになったとの噂は、いくらその手に疎い私でも知っているぞ」

「え!!!!! こ、交際って……ち、違いますよ!」

と、マリンは慌てて葵の言葉を否定した。

噂しか知らない葵はマリンに詳しい事情を話すように促した。

「何が違うというのだ」

そう問われたマリンが答える前にアクアは茶化すようにニヤリと笑った。

「じゃあ、マリンはブルーを『もてあそぶ』つもりなのね? まあ、マリンってば『あくじょ』ね」

そう言われたマリンは即座に再び否定した。

「そ、そんな事できません!」

「じゃあ、交際なくして結婚へ突入?」

「それも違います!」

『もてあそぼう』としているアクアに対して、マリンは否定するだけで手一杯だった。

なので、葵はそんなアクアを止めつつ、マリンに真相を話せるように言葉で遮った。

「まあ、待て、アクア殿。どうやら噂がおかしな伝言ゲームになっているらしいぞ」

「そうですよ! 私はお買い物に付き合って欲しくて……」

「ただの買い物で顔を赤くする理由があるのか?」

と問い続けた葵は、マリンの言う事を理解が出来ずに首をかしげた。

しかしアクアは、マリンの言動の意図がわかったと思える問いを続けた。

「もしかして……マリン、ブルーの顔を直視した所為で赤くなったの?」

「……はい、その通りです。ブルーさんの真っ直ぐな瞳を見ていると……無条件で赤くなってしまって」

と言ったマリンは、今にも発火しそうな程、顔を赤くしている。

そんなマリンに対して、アクアは茶化す事は無かった。

「まあ、マリンってば恋する乙女状態ね」

「早く告白をした方が良いのではないか? まあ、女から言うのは恥ずかしいかもしれんが」

「む、無理です! ブルーさんと会話しているだけでもドキドキするのに、恋人になったら……心臓がもちません!」

と、葵の問いに対して、マリンは真っ赤な顔をしながらも即座に答えた。

すると、再びアクアがマリンを『もてあそぶ』ようにニヤリとした笑みを浮かべた。

「でも、ブルーって男女問わずに人気があるから」

「ううっ」

先程まで赤かったと思えない程、アクアの言葉を聞いたマリンは青くなった。

「マリン以外の人と恋人になってしまうかも……ね?」

「そ、それは断固阻止です!」

「なら、告白しかないわね」

ただ『もてあそぶ』つもりは無いアクアは最適といえる助言をした。

そして、アクアの言葉を葵も支持する様に、マリンの答えを聞く前に肯定した。

「そうじゃのう。ブルー殿の性格と育ちを考えると、告白してくれるのを待つより、自ら動いた方が得策じゃな」

二人の意見が正しいと思うが、マリンは告白が出来ないという想いと板挟みになった。

「うう……」

「じゃあ、告白じゃなくてプロポーズにしたら?」

「もっと無理です!」

と、マリンはアクアの非現実的すぎる提案は即座に否定した。

そして、比較的冷静な葵がマリンを支持する様にアクアを止めようとした。

「それはあまりに唐突過ぎるであろう、アクア殿」

「でも、ブルーには異存がないでしょう?」

「え?」

「なに……ブルー殿!」

突然ブルーが現れた事に対して、葵は素直に驚いた。

そして、マリンは思いっきりパニック状態になった。

「きゃああああ!!!!!」

「ねえ、ブルー。どうせだから今、告白してしまえば? そうすれば、マリンをいつでも手篭めに出来てよ」

ブルーの気配を感じていたのか、唐突に現れた事よりも『もてあそぶ』提案をした。

「アクア殿!」

「て、手篭めって……」

アクアを止めようとする葵、パニックから回復できないマリン。

そんな二人の様子を気にすることなく、ブルーとアクアは会話を続けた。

「それって、マリンを独占できるって言う事なの?」

「そうよ……でも、それだけではないけど……」

まだ人に慣れていないブルーにアクアが余計な事を教えない様にマリンは止め様とした。

「アクアさん!」

「ふふふ、でも、マリンだって異存はないでしょう?」

「い、異存って……それはブルーさんだったら……って、何を言わせるんですか、アクアさん!」

やはり、パニックから回復していないのか、マリンはアクアのいいように扱われている。

そして、そんなマリンの事も気にせず、ブルーはアクアに問い続けている。

「マリンを僕のものにするには『こくはく』が必要なの?」

「そうよ。でも、独占宣言するなら『実力行使』とプロポーズが必要よ」

「ふーん、そうなんだ。マリンはそれでも良い?」

そうブルーに問われたマリンは回復していない状況でも何とか応えようとした。

「え? えっと、それは……その、あの、嫌じゃないんですけど、心の準備が……」

さすがにこれ以上、恋路を邪魔する事に気が咎める葵はアクアを制止した。

「これこれ、アクア殿。からかうにも限度があろう。まして真剣に好きあっている同士なのだから」

と、言われたアクアは少しだけ躊躇ったが、葵の言葉を受け容れた。

「……そうね。お邪魔虫は消えるわ」

「そうじゃのう。では、失礼する」

「報告、楽しみに待っているわ。フフフ」

そう言って、葵とアクアは二人の前から去っていった。

しかし、残されたブルーとマリンは言葉を交わすことが出来なかった。

なぜならば、マリンはアクアの言葉によるパニックから回復しきっていなかった。

そして、ブルーはアクアの言う『こくはく』と言う事がわからなかった。

数分の沈黙後、状況にも耐え切れないマリンが回復しきってはいなかったが口を開いた。

「あの……」

「なに?」

いつもの様に、けれども真摯にブルーはマリンを見ながら問い掛けた。

その想いへ応える様に、マリンはブルーに問い返した。

「ブルーさんって……その、私を独占したいって本当ですか?」

「マリンは、いや?」

余りに素直な言葉を返されたマリンは、真っ赤になりながらもブルーに応えた。

「い、嫌じゃないです! でも、本当に私なんかで良いんですか?」

「僕はマリンじゃなきゃ嫌だ」

ブルーの真っ直ぐな愛情を知ったマリンは勇気を持って想いを言葉にしようとした。

「わ、私も……」

「うん?」

「私も……ブルーさんを独占したいです!」

というマリンの言葉の意味が、ブルーにはわからなかった。

しかし、互いの想いが一緒だと思ったブルーは感謝の言葉をマリンに伝えた。

「ありがとう、マリン」

「ブルーさん……」

 

 

 

二人の世界を作っているマリンとブルーを陰から見守っていたアクアは溜め息を吐いた。

「あらあら、簡単に片付いてしまったみたいね……残念」

と言うアクアの言葉に対して、同じく陰から見守っていた葵は少し窘めるように言った。

「これこれ、アクア殿。これは素直に喜ぶべきであろう」

「二人がくっつくのはお日様が昇るくらいわかりきった事だもの。あまりに簡単すぎて拍子抜け……」

「そうだのう。だが、誰かが発破を掛けなければ、あの二人が恋人にはなれなかったであろうから……良い妹を持たれたな、ブルー殿は」

そう葵は素直にアクアの言葉を認めたが、続く言葉は予測できなかった。

「ふふふ、これからは素敵な小姑ライフね」

そういうアクアの頭にどんなプランが練られているか、葵にはわからなかった。

だが、ブルーとマリンに小さくも大きな困難が待ち構えている事だけは葵にもわかった。

「……程々にな、アクア殿」