6 おまえはそれで幸せか、と人は言う

「おい、ロイが本気で少女にプロポーズしたって、本当か?」

そう電話で問い掛けてきたヒューズに対し、氷炎は大きな溜息と共に答えた。

「ええ。でも、ロイがロリコンになった訳ではないみたい」

という氷炎の答えは、ヒューズに一応の安堵を与えた。

女タラシという看板の次がロリコンでは、大総統を目指すものとして問題があり過ぎた。

それ故に、ヒューズはいつもの軍用回線ではなく、氷炎の自宅へ電話をかけていた。

そのような気遣いを見せたヒューズは、更に氷炎の心情を思い、その確認を口にした。

「そうか……大丈夫か?」

「もうダメね。ロイはハイテンションで式場から新居まで調べようと躍起で……ホークアイ少尉と抑えるだけでも精一杯な状況よ」

知らされるロイの行状に対し、ヒューズは答える言葉を失った。

いや、ヒューズの意図とは違う答えだった以上に、ロイの言動が想定外だったからだ。

しかし、確認したかった問い掛けの答えを求め、氷炎に対して更に確認を口にした。

「いや、そうじゃなくて」

「ああ、護衛に関して? でも、彼女との再会は先だから、護衛はまだ選んでいないけど」

「いや、おまえさんはどう思っているんだ?」

「私? ロイが未来のファースト・レディにと選んだ少女よ。ロイ以上に護るわ」

という氷炎の答えは、意図通りかつ想定内の事態を、ヒューズに再確認させた。

それ故に、事態と氷炎の意志を確認するように、ヒューズは慎重に問い返した。

「……本気で言っているのか?」

「ええ。ロイの場合、自分より彼女を護る事に躍起になって、自滅する可能性は高いから」

「いや、俺はそういう心配をしているんじゃないぞ」

そこまで言われても、氷炎はヒューズの意図がわからなかった。

いや、正確に言えば、その意図を確認する理由がわからなかった。

それ故に、氷炎はヒューズの意図を確かめるように直球で問い返した。

「どういう意味?」

「ロイに生涯の伴侶が見つかった。その伴侶となる少女を本気で守れるのか?」

と問われた氷炎は、少しだけ間を置いてから、澄んだ強い意志を感じさせる声で答えた。

「……マース、私は言ったはずよ。私はロイを護りたいだけで、それ以外は望まないって」

「……」

「私が望むものは、ロイが歩む道で必要な時に助け、見守りたいだけ」

そう氷炎が静かに、だが強い決意を込めて答えた。

そう決意する氷炎の強さと清さは、電話先のヒューズにも伝わる程だった。

だからヒューズも静かに答えた。

「……そうか」

「ええ。今更な確認をしないで、マース」

「じゃあ、ロイを精一杯抑えてやってくれ。ロリコンで軍法会議沙汰にならんように」

「ええ。そこまで堕ちないよう、ロイにも自制をしてもらう。実力行使も辞さないわ」

と、氷炎もヒューズと同じように、先程までの雰囲気とは相反する明るい声で答えた。

しかし、その声とは相反する氷炎の宣言に対し、ヒューズは笑って同意した。

「さすがは氷炎の錬金術師殿。ロイの暴走もしっかり止めてやってくれ」

「まかせて。でも、ロイの彼女自慢には付き合ってやってね」

「おう。俺の妻自慢で負かせてやる」

そうヒューズに応えられた氷炎が、その『こたえ』を想像した直後、その表情は曇った。

「……私的には楽しそうな会話だけど、周囲の被害が凄そう」

「お、今日も聞いてくれるか?」

「ごめん、今日はこれからも仕事なの。今はロイのサボりの方が有り難い状況だから」

という氷炎の声から、精神的な疲労を感じたヒューズは話を切り上げるように答えた。

「そうか。悪い時に電話したみたいだな」

「そんなことはない。マースの声を聞けて良かった。遠くないうちに時間をつくる」

「ああ。楽しみにしててくれ」

「ええ。楽しみにしてる」

 

 

 

 

 

ロイがプロポーズした少女とは、オリキャラ『エドの双子の妹』です。

略するとエルリック兄弟と出会った時、エドの双子の妹とも出逢った結果、告白を通り越して結婚を肯定させようとします(え?)

しかし、それはロイに焔をつけられたエドと氷炎によって阻止されます。

ですが再会以降、ロイはエドの双子の妹と出逢う度、求婚をするのが日課となる状況です。

 

 

 

使用お題『護りたいあなたへ捧げる10のお題 (1)』配布元:疾風迅雷