悪魔VS堅物 -沖田編ー

薄桜学園の紅一点である雪村千鶴が学園内で事故に遭って入院する事態となった。

その様な緊急事態、否、恋人の一大事に沖田総司が黙っているわけがない。

故に、沖田が行動を起こす前に、斉藤が事情説明という名の忠告を任された。

「入院となった千鶴の容体は安定しているが、1週間は家族が看病をする必要があると医師が判断された」

「……それで南雲は学校を休んでまで、千鶴ちゃんの看病をしているってわけ?」

千鶴が入院となったのは数時間前で、南雲の公休も決まったのは一時間も経っていない。

だが、学園内でも悪魔と呼ばれる沖田のその様な異様さに斉藤は慣れていた。

また、沖田もそれを理解している為に、斉藤の忠告という名の牽制にも応じなかった。

それでも、斉藤は任された、否、沖田を止めるには自身が適切だと思ってただ努めた。

「そうだ。千鶴が倒れた原因は学園にも責が有る為、一時的な対応としても認められた」

「南雲は良くて、僕がダメだなんて認めない!」

「南雲は千鶴の家族だ」

「僕は……」

そういう沖田の言い訳、否、言い分も予測していた斉藤はそれも一刀両断した。

「あんたと千鶴は結婚もしていない。故に、家族の南雲が千鶴の看病をするのが最良だと、看護教諭である山南先生が病院へ付き添った後に報告し、教頭である土方先生と学園長の近藤先生が了承された」

「……土方さんが絡んでいるのは納得が出来ないけど、近藤さんの判断なら従うよ」

「……ならば、半月の面会謝絶も受け入れるか?」

という斉藤の提案、否、容認を求められた沖田は魔王も逃げる壮絶な笑みを見せた。

だが、斉藤がそれを恐れる事も流す事もなく、淡々とした表情で答えを待った。

故に、沖田は壮絶な笑みを浮かべたまま、感情を押し殺した声で問い返した。

「この提案も土方さん仕込み、だよね?」

「……」

「山南さんの発案で近藤さんが納得したって言うシナリオでしょ?」

そう沖田から確認をされても斉藤は応えず、ただ自身が問うた言葉への返答を待った。

その様な斉藤の堅物といわれる無反応と務めへの一途さに対して沖田も譲らなかった。

「こういう場面でも否定も肯定もしないのは一君らしいし、だから、あの人に頼まれたんだろうけど……僕が納得すると思ってる?」

「……千鶴の回復が早ければ、面会謝絶は1週間だ」

「……南雲が定期報告をしてるの?」

「山南先生と保健委員の山崎君が雑用と定期確認をしている」

という斉藤の答えから、沖田は事態を好転する糸口を見つけた。

「……つまり、僕にも大義名分が有れば良いんだね?」

そう沖田から問われた斉藤は、用意されていた答えを淡々とした口調で答えた。

「それが認められぬから、俺が頼まれた」

「やっぱり、土方さんが主導なんだ。だったら大人しくなんてしてられないよ」

「……『すみません。でも、総司さんにまで無理もしてほしくなんです。ですから、お願いします』という千鶴の伝言があったとしても、か?」

という千鶴からの伝言を聞いた沖田の表情は憑き物が落ちたように色が無くなった。

そして、それも想定内であったが故に、斉藤は淡々とした口調で沖田に問い続けた。

「南雲が学校を休む事態も受け入れ難い千鶴に、あんたまで無茶を言って悪化させる気か?」

「……半月、だよね」

「ああ。医者の見立てではな」

「千鶴ちゃんが望むなら、半月くらいは待つよ。だから千鶴ちゃんに伝言を頼むよ『覚悟をしてて』って」

そう斉藤に答える沖田の表情はいつもと変わらない飄々とした表情になった。

否、それが沖田の仮面であると知る斉藤は想定通りに事態を収集が出来たと判断した。

「……わかった。その伝言は千鶴へ伝わるようにしよう」

「あ、一君ってば千鶴ちゃんへの愛情を疑っているでしょ?」

「……千鶴があんたを選んだ事を理解が出来んだけだ」

「それも酷いと思うけど?」

「雪村君の入院先へ定期確認に行く時間ですが、問題は解決しましたか、斉藤君?」

と沖田と斉藤の背後から気配を感じさせずに近づいてきた山南が声をかけた。

また、山南の後ろに控えていた、否、手伝いを任された山崎は一応の訂正をした。

「……一応ですが、タイミングは計っていませんよ、俺は」

「そうなんですか、山南さん?」

そう問うた沖田は山南と笑顔で意図を探りあうが故に山崎はただ溜め息を吐いた。

また、ブリザードが見える沖田と山南の微笑み合戦を見ても、斉藤は淡々と報告をした。

「お聞きの通り、総司も納得し、伝言だけですみました」

「おや、斉藤君まで私を疑うんですか?」

と斉藤に答えた山南が更に冷戦を起こしかけていると察した山崎は短くも牽制した。

「……山南先生」

「そうですね。頼まれた届け物もありますから、急ぎましょうか」

そう山崎に答えた山南は千鶴が入院した病院へ向かおうとした。

そして、山南の後を追おうとした山崎は片手に持っていた荷物を沖田に奪われた。

「……沖田さん」

「なに?」

と問い返す沖田の満面の笑みに対し、山崎は再び溜め息を吐き、斉藤は無言だった。

そして、この事態も想定していた、否、斉藤に指示をしていた山南はただ微笑んだ。

「駄目ですよ、沖田君。頼まれた届け物も私達だけで十分です。だから、君に大義名分は無いですよ。それに、今日から1ヶ月ほど、剣道部では校長自らの指導を強化されるそうです。ですから、沖田君にも手伝って欲しいと言っていましたよ?」

「はい。俺もその件は聞いています」

「……近藤さんがそこまでされるなら、僕も大人しく待ちますよ」

そう言った沖田は山崎から奪った荷物を返し、斉藤と共に道場へ向かおうとした。

それを確認した山南は微笑みながらもしっかりと釘も刺した。

「では、頼みましたよ、斉藤君」

「はい。では、道場に向かうぞ、総司」

「……」

「総司?」

「ほんと、千鶴ちゃんには覚悟してもらっておくか」

という沖田の言葉の意味とその後の惨事を想像が出来た斉藤はただ溜め息を吐いた。

「……ほどほどにな」

 

 

 

 

 

皓月庵(サイト)様への寄稿小説ですが、当サイトでは美麗イラストのUPが出来ていません。すみません。