NEXT「GO TO THE WEST」

三蔵が三仏神に西行きを命じられる前。

観世音菩薩が静華だけを呼び出した為にイラついた三蔵は悟空に八つ当たりしていた。

また、その様な三蔵の不機嫌さも嬉しいと思う末期な自分に静華は呆れた。

それ故に、静華は三蔵の機嫌を直してから出立した為に時間が予定よりも遅くなった。

「俺を待たせるなんて……だが、イイ女を待つのは苦じゃねぇな」

そう観世音菩薩が気軽な調子だった為、臣下の礼で控えていた静華も気軽に応えた。

「うふふふ、ありがとう」

「それに過去でなら俺もおまえのイイ女ぶりを夜でも確かめたしな」

「そうね。三蔵と出逢うまでは裸の付き合いもあったし……」

と静華が友人モードで観世音菩薩との会話を楽しんでいると、二郎神が話を進めようと口を挟んだ。

「……いい加減、本題に入ってください、お二人とも」

「あら、嫉妬されちゃったわ。どうしましょう、菩薩?」

「これくらいで嫉妬する方が狭量なだけだ、気にすんな」

「玄奘三蔵の元に早く帰りたくないのか、静華殿?」

そう二郎神に指摘された、否、痛い急所を突かれた静華はあからさまにため息を吐いた。

「それを言われたら任務を聞くしかないわね……宜しいでしょうか、観世音菩薩様?」

「ああ、あいつらを西に行かせる。おまえも同行しろ」

という観世音菩薩の短い命だけで全てを察した、否、桃源郷の異変を独自に調べていた静華は西へ行く必要性も理解していた。

故に、静華も気軽に短い言葉でその命を受け入れた。

「あら、それは女の理想郷になりそうね」

「女として三蔵の隣に居られるから、か?」

そう観世音菩薩から問い返された静華は意味深かつ心意が読めない笑みを見せた。

そして、観世音菩薩も静華の玄奘三蔵に対する執着と想いを知っているが、『現状』を察すが故にあえてポーカーフェイスめいた笑みを返した。

その様な笑みの応酬をしてから、静華は観世音菩薩に問いを返した。

「いえ、女1人に殿方4人な状況は逆ハーレムでしょう?」

「なら、そういうコトにしておくか。じゃあ、頼んだぜ?」

と観世音菩薩から問われた、否、『現状』を静華も知っていると分かった上でただ命に従った。

「御意」

 

 

 

観世音菩薩からの命を受けてから静華はすぐに三蔵がいる寺院に戻らず、悟浄と八戒が住む家を訪れた。

そして、唐突な来訪に対し、居候から主夫といえる立場となった八戒は、不審な静華の来訪に困惑した。

だが、家主である悟浄とも親しい静華を門前払いする気がない八戒は、挨拶が代わりに疑念を言葉にした。

「三蔵と喧嘩でもしたんですか?」

「あら、そう見える?」

「いいえ、どちらかというと悟浄が居ないタイミングでの来訪ですよね?」

そう八戒が問い返すと、静華は満面の笑みを見せた。

その様な否定も肯定もしない静華の反応に対し、八戒も意味深な笑みで応えた。

故に、静華は八戒の問いに答えながら無断で室内に入った。

「うふふふ、相変わらず鋭いわね、八戒も」

「悟浄もそう言うと思いますよ」

「ええ。でも悟浄とは酒場で会いたかったから」

という静華をもてなそうと八戒はお茶を淹れながら、八戒は真面目な表情で静華が来訪した真意を探った。

「……天界絡み、ですか?」

「秘密は女を美しくさせるモノよ?」

「黙秘権を行使されるなら、どのようなご用件で僕に会いに来たんですか?」

「ただ八戒に会いたかった、じゃあダメかしら?」

そういう静華の問い返しは八戒にとって想定外だったが、親しい静華の来訪は嬉しいと思った八戒はただ友人をもてなす様な笑みを見せた。

「三蔵に聞かれたら、嫉妬で殺されそうですね」

「大丈夫よ、三蔵も同じ気持ちになるから」

「では、美味しい紅茶がありますから、少し待ってください」

「ありがとう、八戒」

と静華も満面の笑みで答えた為、八戒も楽しげにお茶を淹れながら茶菓子も探した。

 

 

 

八戒とティータイムを楽しんだ静華は悟浄が常連となっている酒場を訪れた。

そして、その酒場で一人酒をカウンターで楽しんでいた悟浄に静華は声をかけた。

「相変わらずね、悟浄?」

「姐さんも相変わらずイイ女だな」

「お邪魔しても良い?」

そう静華が悟浄の隣に座ろうとした為、同行者の有無を確かめた。

「あの生臭坊主や馬鹿猿は?」

「ちょっと寺院へ戻る前の寄り道をしただけよ」

「へえ、あのむっつりが離れる事を了承したなんて、大災害の前触れか?」

という悟浄の問い返しは興味本位めいた軽い口調だったが、そう問う瞳の色の真摯さに気付いていた静華は意味深な笑みと共に問い返した。

「そうじゃないって顔に書いてるわよ?」

「俺のポーカーフェイスを見破れるのは姐さんぐらいだぜ?」

「そうかしら? 薄幸美人さんも出来ると思うけど?」

そう問い返す静華の真意を探ろうとした悟浄はあえて直球で問い返した。

「……姐さん、目的はなんだ?」

「ただ、悟浄と酒を飲みたかっただけよ?」

と問い返す静華の意図は読めなかったが、それを隠す気も誤魔化す気もないと察した悟浄はあえて確かめる事をやめた。

「それは俺的には得だけだな」

「今夜は一緒に楽しみましょう?」

そう静華が悟浄を誘った為、悟浄は静華の誘いへ応える様にキープしていたボトルと空のグラスを渡した。

「お手柔らかに頼むぜ、姐さん」

「大丈夫よ。悟浄が飲み潰れても薄幸美人の元にきちんと届けてあげるわ」

と静華に答えられた悟浄は過去に酔いつぶされた事を思い出した為に苦い表情となった。

また、静華も悟浄の回想を察したが、あえて気付かないふりで勧められた強い酒を飲んだ。

 

 

 

三蔵が長安の斜陽殿で三仏神から西行きを命じられていた頃。

三蔵の帰りを待つ悟空の暇つぶし、否、保護を三蔵から命じられた静華が務めていた。

また、三蔵よりも静華に懐いている悟空は一緒に待ったが、不機嫌さを隠さなかった。

そして、その様な悟空の不機嫌さに気付いた静華はあえて気付かないふりをした。

「もしかして空腹? お菓子ならつくってあるけど、要るかしら?」

「……三蔵が呼び出された理由、知ってる?」

そう悟空から問われた静華はあえて偽らなかったが、全てを告げる事を躊躇った。

「ええ。知ってるわ。それに……」

「それに?」

「……詳細は三蔵に聞いた方が良いわ」

という静華の躊躇いも察した悟空はあえて直球を選んだ。

また、悟空も察する能力が高くて静華の性格も知っている事を、静華も察するが故に悟空に全てを告げる事は出来なかった。

それでも、悟空は静華から答えを求める事をやめなかった。

「俺は静華姉ちゃんに聞きたい」

「ダメよ」

「なんで?」

「三蔵が心を決めるまでは」

そういう静華の答えを論理的に理解が出来ずとも、後で答えが得られるとわかった悟空は両手を差し出した。

「……わかった。じゃあ、菓子が欲しい」

「ええ。たっぷりとつくったから、たくさん食べてね」

といった静華から、抱えきれない程のお菓子を渡された悟空は、先程までの不機嫌さが嘘の様な笑みを見せた。

「やっぱり、すげぇ美味しい!」

「ふふふ、ありがとう、悟空」

 

 

 

三蔵が三仏神から西行きを命じられ、悟浄と八戒を迎えに行く途中、同行していた悟空が燃料切れになった。

その為、静華はどこから出したかわからないくらい大量の菓子を悟空に渡した。

結果、その菓子を食べる事に夢中となった悟空からの質問攻撃から逃れた三蔵が静華に問うた。

「おまえも観世音菩薩の命令で同行するのか?」

「ええ。でも、もう後悔したくない、というのが本音かもね」

「後悔?」

「……あの時の様にただ守られるだけはイヤだから」

そういう静華の答えは、意味深かつ不可侵な答えだと思った三蔵は不機嫌になった。

だが、その様な三蔵の不機嫌さに慣れた、否、愛おしいと思っている静華は妖艶な笑みで無言となった三蔵を誘う様に問うた。

「だから、あとは貴方が確かめて?」

「……俺の答えを聞いても、強引に同行をするつもりだろ?」

「ありがとう、さんぞう」

という静華の答えが想定内だった三蔵は無言で煙草をくわえた。

故に、静華は三蔵がくわえた煙草に火をつけてから再び問い掛けた。

「じゃあ、あとは悟浄と八戒と悟空を確かめるだけ、ね?」

「その結果もわかっているんだろ?」

そう三蔵が問い返すと、静華は距離を感じさせる不可侵な笑みを見せた。

そして、三蔵と静華の攻防が休止となった時、大量の菓子を食べた悟空が先に歩き出した。

故に、三蔵は面倒くさそうに、静華は楽しげに、先行した悟空の隣に追いつくとそのまま歩き出した。

 

 

 

 

 

これにて「サイカイ」シリーズというか、オリキャラの静華と三蔵一行の関係性の紹介をするシリーズはこれにて終了です。

また、これからは原作沿いでも挿話でもない短編を更新する予定です。