マムシとマングース?

部活前の放課後のテニスコートで、海堂は成り行きから静華と試合をした。

その結果に、テニス部員達は言葉を失った。

「ゲームセット。ゲームウォンバイ、藤原静華! ゲームカウント7-6!!」

「……いくら静華先輩相手でも、あいつが持久戦で負けるなんて……ありえねぇ、ありえねぇよ」

と桃城が言う通り、海堂がテリトリーで負ける事など誰もが考えられなかった。

そう、精神力と体力の耐久レース的な彼独自のテリトリーで。

しかし、青学の天災、ではなく天才である、不二はただ微笑んだ。

「流石は静華だね。海堂相手に長いタイブレークで勝てるんだから」

 

 

 

リョーマに負けた時と同じ様に、海堂は自分の膝をテニスラケットで打とうとした。

だが海堂は、テニスラケットを乾に奪い取られた。

「また膝を叩く気か、海堂」

そう言った乾は海堂の手に届かぬように高くラケットを掲げた。

そんな乾へ、海堂は自分への自己嫌悪などが混ざった凶悪と言っていい視線をぶつけた。

しかし、乾は平然と見つめ返しながら、海堂に紙を差し出した。

「テニスラケットを返して欲しければこれを受け取れ」

渡された紙に書かれた練習メニューを見た海堂は目を見開いた。

最近、海堂は自分の能力に限界を感じていた。

その為に、秘密裏に練習を増やして事が知られたと。

だから、乾はこの茶番を作為し、静華にテニスのデータを取らせる試合をさせたのだ。

そして、その試合のデータを基に、乾が強化メニューを作成した。

そういった経緯を理解した海堂の納得した顔を見た乾はテニスラケットを返した。

「この試合の意味がわかったなら、膝を違う意味で痛めてみるんだな」

「……藤原先輩、もう一度試合をしてください、お願いします」

そう言った海堂は、テニスコートから出ていく静華に頭を下げた。

しかし、静華はその思いへ応える気がない様に軽くあしらった。

「それは勘弁してくれ。注文付きの試合より、君相手に本気でやる方が疲れるからな」

静華が言外に込めた無意味さを理解しても、海堂は再試合を望む気持ちを訴えた。

「お願いします!」

これには、静華も立ち止まって、海堂を振り返った。

しかし、静華は応えようとはしなかった。

そして、海堂も今度は頭を下げたまま、譲ろうとしなかった。

一種の膠着状態となり、テニス部員達も口を挟めなかった。

 

 

 

静寂するテニスコートの中で、静かに大石が言葉を挟んだ。

「静華、海堂の熱意に免じて再試合をしてやってくれないか?」

その言葉は、膠着していた二人から言葉を引き出した。

「秀一郎まで……テニス部員の仲間意識が強いのはわかるが、疲れるのは嫌いなんだ」

「お願いします、藤原先輩!」

と言って再び頭を上げてから下げる海堂と、大石の無言の説得に、ただ静華は負けた。

「……かなわないな。では今回のデータによるスキルアップの仕上げを確認させてもらう。これでいいかな?」

そう静華が応えた時、海堂は常に巻いているバンダナを帽子の様に取ってから最敬礼をした。

「有り難うございます!」

「感謝されるのは嬉しいが、度を越した感謝はされる方がつらいぞ、海堂?」

いつもの軽い調子で応える静華に、今度は海堂らしい答えを返した。

「フシュー。以後、気をつけます」

「ははははは、海堂は礼儀正しい少年だな」

そう言って微笑む静華の美少女っぷりに、さすがの海堂でもペースを崩された。

「……あ、有り難うございます、藤原先輩」

「お、海堂が照れるなんて……明日は雨かぁ?」

と、桃城がらしい茶々を入れた。

なので、海堂は即座に臨戦態勢を返した。

「ふざけんな、桃城!」

「お、やる気か、海堂?」

いつもの様にケンカをはじめた二人にテニス部員達は呆れた視線を向けた。

しかし、レギュラー陣は彼ららしい反応をしていた。

「……あれだけ疲労していても、ケンカが出来るなら、メニューは強化した方がいいな」

「ははははは、若いな、海堂と桃は」

「それは一つだけ年上の静華が言う台詞じゃないよ」

「だが、私にはあれだけ熱中できるものが無いから、羨ましいという意味だぞ?」

そう静華が応えると、不二は一瞬だけ迷いを見せたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。

「……そうだね」

「不二?」

と、静華は不二の態度の理由を問おうとしたが、大石が言葉を挟んだ。

「とりあえず、部活再開だな。そろそろ生徒会の会議が終わって、手塚が来るだろうし」

「では退散しよう。試合の許可は取っているが、あの二人の喧嘩の責任を取られるのは勘弁だ」

大石の言葉で静華は思い出したかのようにそう言って、テニスコートから去ろうとした。

すると、いつもの表情で不二は静華に問い掛けた。

「一緒に走ってはくれないのかな?」

「そういう台詞をサラっと言えるのは、不二の特権だな?」

「ふふふふふ、言う相手くらい僕だって選ぶよ?」

と、不二が応えると、それを遮るように再び大石が言葉を挟んだ。

「……本当に手塚が来るぞ、静華」

「おっと、そうだった。では失礼する! 海堂、程々にしておくんだぞ?」

「フシュー。わかってます」

と、海堂が静華の言葉にそう応えた。

そして桃城は、慌てて静華に問い返した。

「静華先輩はこいつの味方ですか?!」

「そんな事はないぞ、喧嘩両成敗だからな。そうだろう、手塚?」

そう言われて登場した手塚は、眉間にしわを寄せながら声を張り上げた。

「桃城、海堂、わかっているな? グラウンド20週だ!」

という言葉を聞いた海堂と桃城は即座に応えて走り出した。

「「はいっ」」

「ははははは、頑張るんだな、二人とも」

 

 

 

 

 

今回はテニスでオリキャラとVSとなりましたが……海棠メインといえるでしょうか?

ですが、本当にこういう友愛系や多くのキャラが関わる事に萌えるので、私の萌えのままに書きました。

ただ、色恋沙汰が関わるモノを希望されるお声があった時は……頑張りたいと思います。