アルムとの結婚での関連イベントを終えたディアーナの疲労は限界を超えていた。
そんなディアーナの体調を考慮したアルムは、寝室で身体を労わるように問い掛けた。
「大丈夫かい?」
そう問いかけるアルムへ、ディアーナはただ真っ直ぐな視線と共に名だけを口にした。
「……アルム」
「ディアーナ?」
「……今、わたくしがアルムを拒んだらどうします?」
というディアーナの問い返しを聞かされたアルムは、冷静にその真意と意図を確かめた。
「……理由を聞いても良いかな?」
「単純ですわ。私も不安なんですの」
「何が不安なんだい?」
「……アルムは言ったでしょう、『思い出はキレイだ。だから、愛おしい』と」
そう言った結婚式の事を思い出したアルムは、ディアーナの真意を探りつつも見守った。
そんなアルムの思いに気付いているのか、ディアーナも真摯な視線と共に言葉を続けた。
「わたくしはアルムが思うほど、変わらずにもいられなかったし、美しくも、優しくもないですわ。ただ、誇れるのはあなたへの想いだけですもの」
「……それだけではダメかい?」
と問い返したアルムは、真剣な口調でディアーナの言葉を後押しした。
そう問い返される事を考えてもいなかったディアーナは素直に驚いた。
「え?」
「正直、僕の君への想い以外で、仲間達を説得する事が出来るとは思っていなかった。いや、だからこそ、仲間達が説得に応じてくれるかが不安だった」
「……」
「でも、仲間達は僕の説得に応じ、君との結婚にも協力をしてくれた。それは僕の勘違いだと思うかい?」
そう告げられたディアーナは、アルムが語る想いと経緯に対し、深い感謝を言葉にした。
「……いいえ。アルムにそう想われることも、協力してくださった方々にも感謝しますわ」
「それは僕の言葉でもあるな。クライン国の方々にも返しきれない恩と感謝があるからね」
と、アルムは再びディアーナのおもいを、後押しする様な言葉を口にした。
だから、ディアーナはただアルムが語る想いを感じるままに身も任せた。
そして、ディアーナに身を預けられたアルムは、確かめるようにその身を抱き寄せた。
「だから、君が共にいることが、僕にとっての幸せだと言ったら、信じてくれるかい?」
そうアルムに問われたディアーナは、素直な思いを吐露する様に告白した。
「……わたくしもですわ」
「……」
「わたくしも幸せなんですの。でも、幸せすぎて怖いなんて……わたくしは愚かですわ」
という、ディアーナのおもいが理解できるアルムは、甘く囁くように問い掛けた。
「じゃあ、僕と一緒に、幸せを積み重ねてくれませんか?」
「え?」
「君が感じる不安を、僕が全て拭う事は出来ないけど、幸せを共に感じることは出来るよ」
「アルム……」
「愛しているよ、ディアーナ。君がいれば何も恐くないくらいに」
そう囁いたアルムは、同意するように美しく微笑むディアーナの唇に自身の唇で触れた。
今回でお題を使用したSSの更新は終了となります。
お付き合い頂き、有り難うございました。
今回は、アルムディア本編の補完小説らしい仕上がりに出来たかと。
恋愛の10題(11)お題配布元:疾風迅雷