月森との合奏を早く終えた香穂子が柚木を探していると志水に声をかけられた。
そして、志水の提案で人気が無い屋上へと移動した香穂子は提起された言葉に驚いた。
「柚木先輩と日野先輩は和解すべきです」
そう志水から断言された香穂子はとりあえずその情報源ときっかけを確認した。
「……えっと、火原先輩?」
「はい。火原先輩から教えて頂きました。日野先輩の音が悪くなった原因が柚木先輩との対立だと」
と言われた香穂子は、志水らしい音楽に絡めた言い様にただ驚いた。
「た、対立……?」
「違うんですか?」
「えっと、火原先輩がそう言ったの?」
「火原先輩は日野先輩と柚木先輩の仲が悪くなった事が理由だと教えて頂きました」
そう志水が香穂子に答えた為、香穂子は先輩として志水に言うべき言葉が無いと思った。
だが、月森と同じく、音楽にしか興味がないと思っていた志水の変化が香穂子は嬉しいと思った。
そして、その様な香穂子の思いに気付かない志水はただ自身の主張を言葉にした。
「確かに音や関係を深めるには対立は必要です。ですが、同時に和解も必要だと思います」
「……ありがとう、志水君。でも、まだ和解は出来ないかも」
「どうしてですか?」
「……対立じゃなくて我が儘だから、かな」
という香穂子の答えは、人にも興味を持ち始めたばかりの志水には難しい答えだった。
故に、志水は説明を求める様な視線を向けたが、香穂子はただ苦笑いながら柚木を探すと告げてから立ち去った。
志水君はアンサンブルや香穂子嬢との恋愛過程で音楽以外への興味を抱く、という印象のままに書きました。
なので、人と積極的に関わろうとしても、まだ音楽と一緒に捉えてしまうかな、という段階をイメージして今回は書きました。
でも、なぜかファーストといえる柚木先輩よりも書きやすかったので……
うん。どうして柚木先輩は難しいんだ!という話を語り合える方、募集中です!!