1あなたを護りぬく、それが存在意義

「ロイ!」

という叫びを事件の現場指揮中に聞いたロイは、迫るナイフから身を逸らそうとした。

しかし、迫るナイフから完全に避けられないと思ったロイは、最小限にしようとした。

だが、ロイの身がナイフによって傷つく事は無かった。

ロイの護衛役で少佐でもある氷炎の錬金術師が、そのナイフを自らの身体で受けたから。

「!」

その状況にロイはただ驚き、ハボックはナイフを持つ人物を無力化した。

そして、すぐに状況を把握したホークアイが、ナイフで傷ついた氷炎の身体を支えた。

「大丈夫ですか?」

そう問いかけるホークアイは、慣れた手つきで氷炎の傷の応急手当てをはじめた。

しかし、ロイを無理にかばった所為か、氷炎が傷を負った場所が悪すぎた。

その為、傷から流れる血を止められないホークアイは、指示を仰ぐようにロイを見た。

「大佐、ハボック少尉と共に病院へ。ここの指揮はお任せください」

「ああ。頼んだ……」

そうロイが答えた時、氷炎が浅くはない傷の痛みに耐えながら、小さな声で問い掛けた。

「……ロイは、大丈夫?」

と問いかける氷炎の声は小さくとも、強い意志と不安を感じさせた。

氷炎が負った傷は致命傷ではないと思ったが、その声はロイの不安を増長させた。

「私の心配をしている場合か!」

「ロイが……無事なら、私も大丈夫……」

そう答える氷炎の声は更に小さくなりつつも、安心と満足げな表情を見せた。

まるで、ロイを護れた事だけに満足しきっているともいえる表情は、周囲を凍らせた。

そして、そのような状況を確認する事なく、氷炎は小さな笑みを見せてから気を失った。

「しっかりしてください、少佐!」

と、問いかけるように叫んだホークアイは、氷炎をロイとハボックに任せた。

そして、任されたロイは氷炎の身体を抱え、ハボックは車の運転席についた。

「ハボック、最短距離で病院へ向かえ」

「……少佐なら大丈夫ですよ、大佐」

「……わかっている」

そう答えたロイは、ハボックの気遣いを受けながら、氷炎の身を案じた。

そう。重傷といえる傷ではなく、氷炎の言動が、ロイに不安を与えた。

ロイを護る為には、どのような犠牲でも躊躇わない氷炎の言動を。

しかし、そんな氷炎の言動を止められない自分の無力さにロイは苛立った。

そのような気配に気づいたハボックは、それを和らげるように問いかけた。

「今回で何度目ですかね。少佐が大佐をかばって病院行きになるのは」

「……さあな。病院など無かった殲滅戦を含めれば、数えきれん数になっているからな」

と答えるロイは、応急手当てを終えた氷炎の身から視線を逸らした。

それを車のバックミラーから見たハボックは苦笑いで答えた。

「ほんと、少佐の護衛っぷりは周囲を凍りつかせるほどに完璧ですよね」

「そんな完璧さなど要らないのだがな……」

「そういっても少佐は変わらないでしょうね」

「……ああ。止められるなら、既に止めているからな」

その言葉に含まれる意味と過去の重さ故に、ハボックは運転に集中した。

そして、その事実を受け入れる事しか出来ないロイは、空いた片手を強く握りしめた。

 

 

 

 

 

今日から当サイトのオリキャラ『氷炎の錬金術師』がメインの過去作を連続更新します。

 

 

 

使用お題『護りたいあなたへ捧げる10のお題 (1)』配布元:疾風迅雷