「きく」月森&香穂子

月森蓮は音楽以外に関心がない。

香穂子もそう思っていたが、柚木との関係を知った月森は愚痴を聞いては的確といえる答えを提示した。

その為、香穂子は合奏の休憩時間では柚木への想いや愚痴を語ったが月森は聞き続けた。

そして、香穂子の演奏がすさんでいる気持ちを体現するような演奏だった為、月森は1曲目の合奏を終えてからすぐに休憩の提案をした。

「部外者が言うべきではないと思うが、君の音楽を認める者として言う。音楽には八つ当たりをしないで、常に愛して欲しい」

「……そんなに私の音って酷いかな?」

そう香穂子が問い返すと、月森はヴァイオリンをケースにしまった。

そして、ヴァイオリンをしまう事を勧める様に月森は香穂子にケースを手渡した。

「話なら聞くが?」

「うん。ありがとう、月森君」

と答えた香穂子は月森に今日の昼休みでの柚木との会話を語って、自分の想いと愚痴も言葉にした。

それを黙って聞いていた月森は聞き終えると、少しだけ考えてから香穂子に答えた。

「そうか。だが、柚木先輩には柚木先輩の考えがあると思うが?」

「私だって隠した方が良い事くらいわかってるよ。でも、でもね、私と二人の時でも、月森君と二人で合奏したり、他の男子と話していても穏やかに聞き流すなんて……あり得ないと思うの!」

「だが、君は加地のように想いを言葉にしすぎる者は、逆に信用が出来ないと言っていなかったか?」

そう月森から指摘された香穂子は過去にそう愚痴っていた事を思い出した。

故に、香穂子は居たたまれない気持ちになったが、加地とも同志といえる友人となったが故にあえて反論した。

「……それは、そうだけど……加地君は全てが本気だと理解が出来たから、今では嬉しいと思うし、有り難いって思うよ?」

「ならば、加地のようにTPOも考えずに愛を告げ続ける柚木先輩を君は想像が出来るか?」

という問い返し、否、甘々な言葉を告げる柚木が想像でも怖いと思った香穂子は月森に白旗を挙げて降参した。

「……それはありえないです」

「ならば、話は簡単だ。君は意見を主張したようだが、柚木先輩の思いも確かめてから、互いの想いも確かめ合うべきだろう」

「……有り難う、月森くん」

そう香穂子から抹消面から感謝された月森は、変わらぬ淡々とした態度で合奏を促す様にヴァイオリンをケースから取り出した。

それ故に、香穂子も練習室に居る現状を再認識してケースから取り出したヴァイオリンを構えた。

その様な無言で分かり合える関係と香穂子から頼られる現状に、月森も勘違いしたくなる想いがあった。

だが、それに月森が気付いた時には、香穂子は柚木に想いを捧げ、柚木も香穂子を愛している事にも気付いた。

だから、月森は同志よりも親しい関係である事を自ら選び、香穂子への想いを封印した。

「……礼はいらない。ただ、君にはこれからも音楽を愛し続けて欲しい」

「うん。それは絶対だよ!」

「なら、いい」

と月森が香穂子に答えるとすぐに合奏を再開した。

また、その合奏がいつも以上のハーモニーを奏でた為、月森は合奏を早く切り上げる事を提案し、応じた香穂子は柚木の姿を探した。

それを見送った月森は柚木にも複雑な思いがあったが、香穂子との関係を崩したくないが故に、ただ音に想いを乗せてヴァイオリンを奏でた。

 

 

 

 

 

月森君は色恋沙汰への関心はないと思いますが、香穂子嬢に関しては別かと。

いえ、人は限定されても意外と世話好きで相談にも応じる人かな、と勝手に思っています。

ただ、この様にあからさまに柚木への恋情と愚痴を月森に語る香穂子嬢は……アリかな?という不安は有りますが。