5 この手をとって(お題使用1)

簡単な現状確認後、アルムはディアーナと一緒に向かう予定だった合流地点へ急いだ。

そして、想定の2倍である4人となった事で、アルムは仲間達との合流地点までの道を予定から変更し、その道と合流地点までの案内役をアルムが率先した。

しかし、周囲を警戒しながら道を進むアルムと後方に気を遣うシルフィスと違い、ディアーナとメイは久方ぶりの再会と会話を楽しんでいた。

状況を考慮したシルフィスは会話を止めようとしたが、メイの問いによって遮られた。

「ねえ、ディアーナって魔法の才能があったりした?」

そう問われたディアーナはただ驚きから目を見開いた。

ディアーナの近況やアルムとの出逢いを無心に聞いていたメイの意図に気付いたから。

それはシルフィスも同じだったらしく、周囲の警戒を一瞬だけ怠った。

しかし、シルフィスはすぐに周囲を再警戒し、メイの意図を確かめるように問い返した。

「確かに姫が大樹を癒したのは、指輪の力だけではないかもしれませんが……」

「でしょ? 使い手を選ぶモノなら、なおさら特別な才が必要だと思うのよ」

「……魔法の勉強もしましたけど、わたくしに魔法の才があるとは聞いた事もないですわ」

というディアーナの答えは、メイに少しだけ肩を落とさせながらもいつも調子に戻した。

「そっか……そうだよね。魔法の才があったり、大樹に関わる特別な血筋なら、ダリスの馬鹿王が欲しがるはずだしね」

今まで深慮が嘘の様な率直すぎる言葉に対し、二人の少女達は咎めるように名を叫んだ。

「「メイ!」」

「あ、ごめん」

深慮と明るさを感じさたメイが消沈した為、アルムは苦笑いながらも場を和ませた。

「いいや、気にしないでくれ。姫に大樹を癒すことを勧めたのは僕だからね」

「さすが! ディアーナが選んだ王子様は懐が広い上に優しいね」

「メイ!」

そうシルフィスは再び名を咎めるように名を叫んだ。

しかし、先程はシルフィスと同反応だったディアーナは、アルムの無反応に首を傾げた。

いや、アルムが顔を伏せている為、ディアーナは覗き込む事も出来ずにただ見守った。

だが、そんなディアーナの気遣いに気付かなかったアルムはいきなり笑いだした。

「あははははははは」

というアルムの笑い声は、三人の少女達から言葉と反応を奪った。

しかし、なんとか問う事に成功したディアーナも、名を言葉にするだけで精一杯だった。

「アルムレディン様?」

「……あ、すみません。彼女が噂以上に想定外だったので、つい」

そういうアルムのような反応に慣れていたメイは、あからさまに機嫌を悪くした。

「……それって誉められてる?」

「……メイ、いくら状況が状況とはいえ、王室の方への敬意を忘れていては、クラインの名に傷がつきます」

相変わらず常識的なシルフィスはメイの言動を改めるように咎めた。

しかし、メイとその言動を気に入っている王女のディアーナはシルフィスに問い返した。

「……メイにその忠告は今更ではなくて?」

「うーん、殿下もOKだったし、状況が状況だし……ね、シルフィス?」

「ね、ではありませんよ、メイ! クラインの皇太子であるセイリオス殿下は……」

と、シルフィスは小言を続けようとしたが、アルムは苦笑いながら会話に割って入った。

「僕にも形ばかりの敬意は必要ないよ。二人とも、ディアーナ姫の親友なのだから」

「さっすがは、ディアーナの王子様だね。二人の事はアタシも応援するよ」

「メイ!」

再び、メイへのシルフィスの小言が始まりかけた時、アルムはディアーナに問い掛けた。

「あとディアーナ姫、僕のことはアルムと呼んでくださいませんか?」

「え……アルム様?」

「公の場でなければ、アルムと呼び捨てにしてください」

そういうアルムの答えは、ディアーナに状況を忘れさせるくらいの驚きと喜びを与えた。

「……アルムと呼んで良いんですの?」

「ええ。僕もディアーナと呼んでも良いですか?」

「もちろんですわ!」

と応えたディアーナが、二人の世界に浸りかけた為、メイが的確に会話に割って入った。

「……あー、ゴメン、そろそろ合流地点とやらに着くかも」

そうメイに言われたアルムとディアーナは、顔を赤くしながら互いの視線を逸らした。

そして、『じょうきょう』を振り回しているメイの言動に対し、シルフィスが謝罪した。

「……申し訳ありません、アルムレディン王子」

「いや、気にしないでくれ。では少しだけ、ここで待っていてくれないか。仲間達に状況の説明と情報収集をしたいんだ」

「はい、我々はここで待ちます」

と、シルフィスが三人を代表するように力強く答えた。

立場よりも状況的に一番頼れると思われるシルフィスの答えを聞いたアルムは安心した。

そして、残していくディアーナに対して甘い視線を向けてから仲間達の元へと向かった。

「ここも安全とはいえないから、仲間達に話がつき次第、解放軍との集合地点に向かおう」

「……ディアーナってホント男運がイイよね」

そうメイは問い掛けるとも呟くともいえない言葉を口にした。

状況を理解していないと思うメイの言動に対し、シルフィスは咎める様な視線を向けた。

しかし、一番立場が確かな王女であるディアーナはメイの言動を擁護した。

「わたくしもアルムと同意見ですわ。メイはメイらしい方が楽しいですもの」

「ですが、クラインの……」

と、シルフィスはあくまでも頑なに儀礼にこだわろうとした。

しかし、メイは言動を改めるどころか、ディアーナの援護射撃の所為か変わらなかった。

「あー、それはシルフィスに任せるっていうか、一緒なら勘違いは生まれないと思う」

「確かに儀礼はシルフィスに任せた方が安全ですわ。わたくしよりも良いと思いますもの」

そうディアーナまで答えた為、シルフィスの表情が表面的な笑みを浮かべた。

その笑みに含まれている氷点下の怒りを理解したメイとディアーナはすぐに謝った。

「ゴメン、アタシが悪かった!」

「わたくしも、もっと作法を学びますわ!」

「……本当ですか?」

表情は変わらずとも、シルフィスの態度が軟化していると感じた二人はすぐに追随した。

「も、もちろんだって」

「お、王女として当然ですもの!」

「……お話中、失礼しても良いかな?」

と、アルムが控えめな口調で三人の少女の会話に割って入った。

そして、その声に一番はやく反応したのは、愛称で呼ぶ事を許されたディアーナだった。

「ア、アルム?!」

「申し訳ありません、アルムレディン王子」

先程までの氷点下の笑みを感じさせない、生真面目な謝罪を言葉にしたシルフィスに対し、アルムはただ苦笑っていた。

「いや、謝罪は必要ないよ。ただ、仲間達が詳しい話を求めているから、現状報告と質疑応答を頼みたい」

「は、はい。わたし達も知っている事は限られていますが」

「それでも構わない。ダリスにも直接潜入したという、君達の話も詳しく聞きたいようだ」

そうシルフィスに答えるアルムに対し、メイも明るくも冷静な答えを返した。

「アタシも話せる内容に限界はあるけど、それで良いなら」

「……わたくしも同行して良いんですの?」

「もちろん、君は未来のダリス王妃だからね」

と答えるアルムの言葉を、素直に喜ぶディアーナは感極まったように名をただ口にした。

「アルム……」

「……えっと、今は時間が惜しい時だってわかってる?」

そう再びメイに言われたアルムとディアーナは状況を再確認した。

そんなメイの言動に対し、シルフィスは再び小言を口にしようとした。

「メイ、もう少し言い方が……」

というシルフィスの小言を遮るように、アルムはメイの言動と状況を受け入れた。

「いや、メイの言葉はもっともだ。では、同行してくれるかい、ディアーナ?」

「もちろんですわ、アルム」

そう答えたディアーナは、アルムが差し出した手に己の手を預けた。

そんな二人の姿は、今までの苦労を吹き飛ばすようなあたたかさを感じさせた。

そして、それに気付いていない本人達は、今からはじまった幸せをただ喜んでいた。

 

 

 

 

 

……想定よりも長いSSとなりました。

いえ、予定よりもアルムの出番が多くなり、微妙でも糖度があるSSとなったかと。

ただ、糖度といっても微糖レベルですけどね。

ようやく独白が無いSSとなりました。

ですが、次回更新予定のSSではアルムの出番が減るかもしれません……

 

 

 

恋愛の10題(11)お題配布元:疾風迅雷