「で、答えは?」
「え?」
「どうして千鶴ちゃんが僕に想いを告げないのか、僕が気付かないと千鶴ちゃんは思い込んでいるのかって言う問いに対しての答えだよ」
そう沖田から問われた、否、見透かされている状況でも、千鶴は足掻こうとした。
「……それは沖田先輩でもわかっているのでは?」
「そうだねぇ……僕が千鶴ちゃんを千鶴と呼んでいた頃の記憶が完全じゃないって事かな」
「え……」
「確かに新選組の剣だった頃の僕なら、想いを素直に告げなかったと思うし、からかう対象だと思われても仕方がないけど」
と沖田から告げられた千鶴は、自身の過去の記憶が完全ではないと理解した。
だが、それ故に混乱した千鶴は沖田の言葉と想いは否定できなかった。
否、千鶴の深い想いと気付いていない古い記憶が、沖田の言葉を受け入れさせた。
故に、沖田もその様な千鶴の変化に気付き、そっと近寄ってから抱きしめた。
「でも、それは千鶴も気付いているんでしょ? だから、君はとっさに僕の名を口にした時に総司さんと叫んだんでしょ?」
「……本当に沖田先輩は私が好きなんですか?」
「それを疑われるのは本当に心外なんだけど?」
そういう沖田と問いを返し合った千鶴は急に沈黙した。
その意図はわからなかった沖田はその意図を確かめる様に顔を上向かせた。
「千鶴ちゃん?」
「ありがとうございます……総司さん」
と告げた、否、礼を言葉にした千鶴は、近くにあった沖田の頬にキスをした。
千鶴からキスをされた沖田はいつもの余裕も無く、ただ抱きしめていた腕の力が抜けた。
それを好機と察した千鶴は沖田の腕の中から逃げると慌てて生徒会室から退室した。
「助けて頂いた事には感謝します。それでは、失礼します!」
「……沖田総司」
そう呆然としている沖田に対し、風間は外野にされたが故に更に高圧的に名を口にした。
すると、千鶴からのキスで純な反応をしていた沖田がいつもの調子で答えた。
「あれ、ほんとに退室しなかったんだ?」
「退室が出来ねぇように細工をしたのは沖田だろ!」
「へぇ、あんな虚言を本気で信じたの?」
という沖田の問い返しを聞いた風間は、更に高圧的な不機嫌さを隠さなかった。
「なに?」
「やはりそうでしたか。悪魔の所業よりもタチが悪いですね」
「つまり、逃げないように言いくるめられただけか」
そういう天霧と不知火の言葉で沖田の真意を察した風間は沖田の名をただ叫んだ。
「沖田総司!」
「あと、千鶴ちゃんの想いが、誰のモノかも理解できただろうから、諦められたでしょう?」
「……」
「ここが引き際でしょう、風間」
「ああ、これ以上巻き込まれるのは嫌だぜ、俺も」
という天霧と不知火の進言に対し、沖田を意識した風間は受け入れなかった。
それも見抜いている沖田は、綺麗であるが故に裏を感じさせる笑みで問い掛けた。
「おつきの方が賢いみたいだから、進言は聞き入れた方が良いよ、生徒会長殿?」
……えっと、沖田編における笑撃度に関しては率直なご意見を窺えれば、と思っています。
また、次は千鶴が過去を完全に思い出す事になるので、コメディにはならないかもしれません。