運命の恋 第2話「想い」

登校時に沖田を明確に拒絶した千鶴を放課後に捕まえた南雲は保健室へと向かった。

そして、保健室の主である看護教諭の山南の許可を得た南雲は千鶴へ率直に問いかけた。

「で、お前はあんな悪魔のどこが好きなんだ?」

「え……」

「沖田の態度は不審しか感じられないが、千鶴は沖田が好きだろう?」

そう南雲に問われた千鶴は、大きく目を見開くと同時に耳まで真っ赤となった。

それだけでも答えを察する事は出来るが、あえて南雲は千鶴の言葉を待った。

故に、千鶴も真っ直ぐな視線と共に南雲の問いを素直に肯定した。

「……うん。沖田さんの事は今も昔も好きだよ」

「なら、沖田のどこが信じられないんだ?」

「……沖田さんが私をからかうのは楽しいからで、好きだからじゃないと思うから」

という千鶴の答え、否、適切に聞こえる言葉は、南雲にも理解が出来た。

否、千鶴の言葉が真実だと思えても、それが拒絶する理由だと南雲には思えなかった。

「確かに、あの沖田がストレートに愛を告白するのは頭のネジが飛んだとは思うが、それは千鶴が拒絶する理由じゃないだろ」

「……沖田さんにからかわれるのは嫌いじゃないし、好かれているから、からかわれているのはわかるよ。でも……それだけじゃ、私は満たされない!」

そう千鶴が常に思っている、否、不信として根深くある理由を叫んだ。

それを聞いた南雲はかける言葉が思いつかず、ただ千鶴の思いを聞いていた。

そして、その様な南雲の思いを直感で理解した千鶴は更に深い想いも叫んだ。

「総司さんと呼んでいた頃も、互いに甘えあった事はあったけど、あんなに人目もはばからずに想いを告白された事は無かった!」

「……」

「だから、私は沖田先輩の真意がわからない限り、応える事は出来ない」

という千鶴の想い、否、決意を知った南雲は、ただ苦笑いながらも単純な指摘をした。

「……本当に馬鹿だな、千鶴も。だけど、そんな意地を張って、沖田が他の誰かを好きになったらどうする気だ?」

「総司さんは私以外を好きになんてならないよ、きっと」

「……」

「それに、こんなに愛しい想いを抱ける人は、総司さん以外にはありえない。だから、総司さんが違う人を好きになったら、私が振り向かせる」

そういう千鶴は、初心で可愛らしい反応をしていた乙女ではなかった。

沖田総司という男を愛する事を覚悟している女の表情だった。

それを見せられた南雲は再び口を閉ざす事しか出来なかった。

否、ただ千鶴の深い想いと覚悟を知り、南雲が口を挟むべきではないのだと知った。

故に、南雲に許可を出して聞き役に徹していた山南があえて結論を言葉にした。

「南雲君の完敗ですね。そう思いませんか、山崎君?」

「……山南先生、その言い方では南雲に同情すらしていないようにしか聞こえませんが?」

「南雲君は私の同情よりも場を提供した事の方が重要でしょう?」

という山南の問いに対し、南雲も仮面めいた笑みを浮かべながら答えた。

「そうですね、この学園の裏の権力者に協力してもらっているのは有り難いですね」

「……薫」

そう千鶴が南雲と山南の舌戦、否、この場をフリーズする冷戦を止めようとした。

その為、千鶴に甘くなった南雲は制止を受け入れ、山南もただ微笑み続けた。

「可愛い妹のお願いなら、この場を収めても良いけど?」

「そうですね。あの頃から雪村君には色々と借りも有りますから」

という南雲と山南の冷戦を千鶴が止めた事に安堵した山崎は本来の仕事に戻ろうとした。

「では、保健委員の仕事に戻っても良いですか、山南先生?」

「そうですね。ですが、山崎君。生徒の生活の相談を受けるのも養護教諭の仕事だと思いませんか?」

「……そうですね」

そう山崎は山南の言葉の裏の意味まで理解した上で、表面的な肯定を答えとした。

その様な山崎の鋭さに対し、山南は変わらぬ微笑みを見せた。

また、南雲をはじめとする周囲の配慮と思いを察した千鶴はただ頭を下げた。

「ありがとうございます」

「おや……」

「千鶴が感謝する程の事じゃないよ」

「そうだな。山南先生のお言葉も一理あるからな」

と山南がただ驚き、南雲は照れる様に戸惑い、山崎はまっすぐな態度に好感を抱いた。

その様な三者三様の応えに対し、あくまでも千鶴は感謝の言葉を口にした。

「過去からの縁があるとはいえ、お気遣いして頂いた事には感謝をすべきだと思ったんです」

「……本当に雪村君は可愛いですね」

「ロリコン発言は風紀委員としても許さないけど?」

「雪村君の感謝は嬉しいが、山南先生は法に触れる事だけは避けてください」

「それはこれから雪村君を呼び出している生徒会長にも言った方が良いのではないかな?」

そう山南が南雲からの矛先を変える様に、影の実力者らしい情報戦の強さを見せた。

また、それを聞いた南雲は再び大暴走する様に、地を這う様な低い声音で叫んだ。

「あの馬鹿がまた千鶴に言い寄る気か!」

「……頑張ってくれ、雪村君」

と千鶴に告げた山崎は、配慮しか出来ぬ事を悔いながらも気遣った。

そして、その様な配慮を昔からしてもらっている千鶴は再び感謝を言葉にした。

「はい、ご配慮にも応えられるように頑張りたいと思います」

「まあ、もしもの時は沖田君に遠慮なく頼った方が良いですよ?」

「……はい」

そう山南に答えた千鶴は、急に暗くなった表情のままで微笑みながら答えた。

そして、その様な千鶴の変化の理由を察している山南はただ微笑み、山崎は悔いていた。

だが、怒りで理性を失っている南雲は千鶴の変化に気付かずにただ事後策を言葉にした。

「あいつが生徒会長の権限を行使しなければ、俺も付き添えるんだが……何かあれば助けを求めるんだぞ?」

「うん、それはわかってるよ、薫」

と答える千鶴の変化に気付いた南雲はあえてその理由を問わなかった。

「なら良いが……」

「では、そろそろ時間なので、生徒会室に向かいます」

「ええ、問題が解決する事を祈っていますよ」

「……その前に、問題が起きない事を願おう」

「あの馬鹿の事は気にせず、何かあれば全力で逃げろ。後始末は俺がいくらでもするから」

そう三者三様の気遣いを受けた千鶴は再び感謝する様に微笑んだ。

そして、退室する意味も込めて一礼をすると生徒会室へと向かった。

 

 

 

 

 

今回は千鶴嬢の想いがメインだった為、シリアス傾向ですが、次回からは再びコメディ(ギャグ?)に戻ります。

いえ、千鶴嬢の性格上、重くも深い想いの告白はシリアス傾向になりました。

そして、次は沖田先輩と斉藤先輩の漫才……いえ、現状確認となる予定です。