運命の恋 第1話「悪魔と子羊」

今日も薄桜学園では名物、否、日常となった光景を、男子生徒達は遠巻きに避けていた。

否、学園の生徒だけでなく、教師達も厄災を避ける為に見逃していた。

そう。

悪魔のように恐れられている沖田が、学園の紅一点であるの千鶴を独占する光景を。

また、沖田にせまられている千鶴は常とは違う冷静な表情である事も日常だった。

それでも沖田は、背後から抱きしめた千鶴に想いを告げた。

「好きだよ、千鶴ちゃん!」

「……おはようございます、沖田先輩」

そう沖田に答える、否、挨拶をする千鶴は、告白をされたとは思えぬ冷静な態度だった。

否、初心な反応と無防備さが普通な千鶴としては、あからさま過ぎる拒絶だった。

だが、沖田はその様な千鶴の態度も気にせず、ただ口説く様な甘い挨拶を返した。

「うん、おはよう千鶴ちゃん。でも、二人の時だけじゃなくても、いつでも総司さんって呼んでも大丈夫だよ?」

「……私は沖田先輩と二人だけの時も名前で呼んだ事もありません!」

と千鶴がはっきりと沖田を拒絶すると、校門に居た風紀委員の南雲が近づいてきた。

「そうだよ、沖田。俺の可愛い妹に邪しかない害意を向けるのを止めてくれる?」

「いくら未来の弟でも言って良い事と悪い事があるよ、南雲?」

「千鶴は俺の双子の妹だと何度言えば納得するんだ!」

「とりあえず、未来の兄と慕ってくれれば考えるくらいはするよ?」

そういう南雲と沖田の喧嘩、否、周囲をブリザードにしている冷戦を斉藤は静かに止めた。

「南雲、千鶴が大切なのはわかるが、風紀委員が率先して風紀を乱すのは良くないと思うぞ」

「だったら、その諸悪の根源な悪魔をどうにかしてくれ」

「酷いなぁ、それじゃあ僕と千鶴ちゃんの関係が、悪魔と子羊だとでも言うの?」

「……それ以上に的確な表現は無いだろう?」

「へぇ、千鶴ちゃんもそう思ってるの?」

そう沖田がまっすぐな視線と共に真剣に問うと、千鶴もまっすぐな視線と共に答えた。

「沖田先輩のお言葉は信じられません」

「……それはどういう意味で?」

「薫や斉藤先輩も知る過去においても、沖田さんが恋情を素直な言葉にされた事は無いですから」

と千鶴から明確に拒絶された沖田は瞳を見開いたが、傷ついた表情ではなかった。

否、沖田を明確に拒絶した千鶴の方が、沖田の反応で傷ついた表情となった。

だが、その様な反応に気付いた沖田が口を開く前に、斉藤と南雲が千鶴の言葉に同意した。

「俺も千鶴に同意だ。千鶴をからかいたいのならば、もっと違う方法にすべきだ」

「千鶴が可愛い事はわかるけど、沖田がからかう事を認める気は無い」

そういう斉藤と南雲に答えない沖田はただ千鶴を拘束していた腕の力を緩めた。

それ故に、千鶴は沖田の拘束から無理に逃れると挨拶をしてから教室へと走り出した。

「では、始業が近いので失礼します」

「千鶴!」

と叫んだ南雲は、風紀委員としての役目も忘れ、走り去った千鶴の後を追った。

そして、沖田の態度に不信を抱いた斉藤は、短くも的確な指摘を言葉にした。

「……追いかけないのか、総司?」

「……今日の放課後、南雲は休み?」

「ああ、今日の放課後は俺が一人で待機だ」

「じゃあ、暇つぶしに付き合ってあげるよ」

そういう沖田の言動から相談があると察した斉藤はその誘いに応じた。

「言いたい事があるならば、聞く事はしよう」

「うん。本当に一君は面倒を背負い込むのも得意だよね」

「自覚があるならば、千鶴への態度は改めるべきだ」

という斉藤の指摘は沖田にとっては想定内でも否定したい深くも重い想いがあった。

故に、沖田は斉藤の問いへ真っ直ぐな視線と共に微笑みながら否定もした。

「その誤解も僕が直々に解くから安心して」

「……そう言われると不安しかなくなるな」

「本当に一君は正直だよね。まあ、そこが楽しんだけど」

「俺はあんたを楽しませる事をする気は無い」

「うん。一君はそれで良いと僕も思ってるよ」

 

 

 

 

 

○年越しにSSL設定を捏造した沖田編の連載を開始する事が出来ました!

土方編では千鶴嬢の志と土方さんの恋心がメインで、斉藤編ではキャラクターの会話や関係性がメインでした。

ですが、沖田編では随想録版SSLの笑撃度に真っ向勝負を挑んでみました!

成功しているかは現段階では不明ですが、出来るだけ真っ向勝負が出来るように頑張りたいと思っています!!