「……斉藤さん」
そう山崎から呼び止められた斉藤は、共に廊下を歩いていた千鶴と共に応えた。
「どうした、山崎君?」
「先日の希望進路に関してですが、担任の先生から相談を受けました」
という山崎が告げる内容は、先日の希望進路のアンケートに関してだと斉藤は察した。
また、その様な事が行われる時期だとも察した千鶴は相談の内容がわらかなかった。
否、斉藤に問いかけた山崎も、担任から相談という名の悩みを聞かされて困惑していた。
「……希望進路に婿養子に相応しい大学と就職先、と書かれたそうですが、沖田さんの悪戯等の問題があったのでしょうか?」
「千鶴が雪村家の跡取りになると聞いていたから、それに見合う学歴と就職先を探している最中だった為、途中経過報告になったのだが?」
そう斉藤が自然かつ当然な口調で答えた為、山崎は更に困惑し、千鶴は溜め息を吐いた。
「……斉藤先輩、それは途中経過報告ではないと思います」
「どういう意味だ、千鶴?」
「……すまない、雪村君。今も君に頼らせてもらう」
と山崎から頼まれた、否、頼られた千鶴はそれに応える為、あえて斉藤の答えを否定した。
「希望進路に書くべきは、私の為ではなく、斉藤先輩自身の思いで選んだ希望を書くべきです」
「……俺は千鶴と共に居られるだけで満たされるし、剣道を生涯の支えとしても、生きる糧にするつもりも無い。故に、千鶴と共に居られる事が俺にとっては希望する未来であり、望みでもあるのだが?」
そういう斉藤の天然で修正が難しい生真面目さを理解した千鶴は沈黙した。
そして、千鶴でも手におえない事態故に、山崎は切り札に頼る決意をした。
「土方先生をお呼びしてきます」
「……はい、お願いします」
そう山崎に同意した千鶴も、土方の負担が増える事態に心の中で深く謝罪をした。
だが、問題の当事者である斉藤は、山崎が土方を頼る理由を理解する事が出来なかった。
それ故に、山崎と千鶴はただ土方の負担を増やすだけかもしれないと思っていた。
だが、斉藤の事を思うが故に、山崎は土方に報告をし、千鶴は事態の改善を考えた。
……斉藤さんがとんでもない天然で、沖田さんよりも問題がある堅物となりました(遠い目)
いえ、もっと生真面目なシリアス調になると思ったのですが、書き上げるとコメディになっていました……
明日は平助→千鶴が前提の、平助&千鶴+山南の予定です。