スパコミの新刊サンプル

新刊の入稿が終わった為、新刊のサンプルをこちらにUPしました。
(ピクシブは新刊が自宅に届き次第UPをする予定です)
また、今回も作成をして頂いた美麗な表紙の画像は、
表紙だけではもったいないと思い、裏表紙も含めてUPしました。

そして、文章を読みやすくする為、改行等をサイト用に変更していますが、
大筋に変わりはありませんので、影響はないかと思います。
もし、不都合がある場合は拍手等でお知らせ頂けると助かります。

それでは下記からサンプルとなります。

 

2017年5月4日(スパコミ2日目)
SUPER COMIC CITY 26 東7ホールH-42a
「Voice+ヒイロ&リリーナ至上主義会」

 

「新呪術戦記ガンダムW」800円(全年齢)

表紙のサンプル

 

小説のサンプル

追ってきた怨霊が居ると思われる場所を、少年は隠れながら探ると、その怨霊に優しく話し掛ける少女を見つけた。
故に少年は少女に姿を見せながら問い質した。
「何をしている」
「迷い子を戻るべき道へ帰そうと思ったのです」
と答えた少女は少年の表面的な冷たさを気にもせず、ただ怨霊に優しく諭した。すると怨霊は跡形もなく消えた。
それは退魔というには優し過ぎる異能だった。
「……何者だ?」
「私の名はリリーナ。また、私も貴方のように怨霊を退治する事も出来るようです」
と答える少女は少年の事も知っていると思わせる答えだったが、少女の事はまるで見当もつかない少年は有無を言わせない口調で再び警告を言葉にした。
「怨霊は『人』の領域を侵すモノ。退治するモノだ」
「いいえ。人が人を助ける様に、怨霊にも救いの手は必要なはずです」
そう言う少女の強い口調は、遣われた力とは異質だったが、根底にある『優しさ』は同じだと思った。
それ故に、少年は少女に強い口調で更に問い掛けた。
「その力、何処で得た?」
「生来の力です。貴方流に言うなら私が『黄龍の巫女』だからでは?」
「……怨霊を『癒す』力など、歴代の神子でも得た者はいない。それに、お前の力を知れば、貴族は手中に収めようと争うだけだ」
と答える少年の言葉は、初めて言葉を交わした時から冷たかったが、次第にその言葉に含まれる感情が、変化している事に少女は気付いた。
「では、私を見逃してくれるのですか?」
「貴族達に見つかりたくなければ夜にしろ。貴族達が恐れる闇夜をな。ただ、夜盗などに捕らえられる可能性が高くなるがな」
という少年の言葉に隠された感情に対し、少女は素直に礼を言ってから去った。
「有り難う、ヒイロ。貴方はとても優しい人ね」
そう言われた少年は答える事は無く、ただ少女の力の残滓を消してから、もうすぐ来る貴族達を静かに待つ事にした。

序章

現人神であり政を主に担う帝とそれを支える一部の貴族達が多く住まう京より、徒歩で一日ほど離れた山間に集落があり、その集落では使用者が限られているガンダムを遣う事が出来る神子達が住んでいた。
また、その集落は帝の命によりつくられたが故に神子達は高位の身であったが、ガンダムという呪われた武具と役目故に人柱の里と人々から噂されていた。
そして、今日も集落の近くで怨霊が現れたとの報告を受けた神子達はガンダムをもって退治をしようとした。
しかし、神子達が目的の怨霊を見つける前に、優しくも力強い女の声の主とその言動に驚かされた。
何故ならば、その女、否、身に纏う装束から身分が高いと思われる姫君の言動は異様だった。
あきらかに怨霊とわかる荒魂とその姫君とは会話が成り立った上に、その姫君は怨霊と会話を交わしながら正しき道へ導こうとしていたのだ。
「……そう。ではあなたも迷い子なの?」
そう怨霊と会話する姫君を一度でも見た事があった神子は常の無表情を変えなかった。
だが、姫君が怨霊と交流する、否、導く様な言動を初めて見た神子達にとっては衝撃だった。
それ故に、姫君と怨霊の会話をただ聞く事となり、姫君と怨霊の会話を見守る結果となった。
「では、今から道を示すから、今度は迷わないでね」
と姫君が怨霊にそう声をかけると、怨霊も姫君へ応えるように頷いてから静かに消えた。
その様は退治というには優しすぎるが異様でもあり、見ていた者達を更に驚かせた。
それ故に、怨霊を見送った姫君が見守る事しか出来ずに驚く人の気配に気付き、近づいてきた集団に対して先に声をかけた。
「もしかして出迎えて頂けたのですか?」
「怨霊の気配が集落の入口にあると聞いたからな。まさかおまえが居るとは思わなかったが」
そう答えたのは、姫君と怨霊の『会話』と『癒し』を見たのが二度目である神子だった。
また、その際にその神子と名と会話を交わしたが故に、その姫君は微笑みながら答えた。
「では、ヒイロのお仕事を奪ってしまったのでしょうか?」
と姫君に問われたヒイロは感情を感じさせない冷静な口調で短く答えた。
「……退治よりも癒される方が怨霊にも良いだろう」
「ありがとう、ヒイロ」
そう姫君がヒイロに答えると、ヒイロに同行していた一人の神子が姫君の名に気付いた。
「じゃあ、この姫君は……」
「新しく黄龍の巫女となったリリーナ・ドーリアンだ」
とヒイロがリリーナの紹介をすると、一人の神子が気軽に近づきながら自己紹介をした。
「俺は朱雀の神子を務めているデュオ・マックスウェルだ」
「……私は朱雀の巫女を務めるヒルデ・シュバイカーです」
そう自己紹介をするヒルデはデュオの態度を誤解したが故に警戒心を隠さなかった。
「俺は玄武の神子を務めるトロワ・バートンだ」
と自己紹介をしたトロワは冷静沈着な態度だった為、初対面のリリーナは戸惑った。
だが、次に自己紹介をしてきた巫女の態度はその戸惑いを溶かす陽気さを感じさせた。
「あたしは玄武の巫女を務めるキャスリン・ブルームよ」
「僕は青龍の神子を務めるカトル・ラバーバ・ウィナーです」
そう自己紹介をしたカトルは神子の立場以上に高い身分を感じさせる優雅さがあった。
また、カトルの次に自己紹介をしてきた巫女は更に自信と姫君らしい典雅さもあった。
「私は青龍の神子を務めるドロシー・カタロニアです。お会い出来て光栄ですわ」
「俺は白虎の神子を務める張五飛だ。そして、白虎の巫女は空位となっている」
という自己紹介と白虎の巫女の不在を告げた五飛は、礼儀を失わない程度に懐疑的な表情であった。
それぞれの自己紹介から、リリーナは自身への複雑な思いがあると理解をした。
だが、自身の生来の力と姫宮らしくない性格を自覚しているが故に、ただリリーナは礼儀正しくも短い挨拶をした。
「では、みなさん、どうかよろしくお願いします」
そうリリーナが挨拶をすると、デュオは好意的に思える笑みを見せ、それ故にヒルデは心情を無理に隠そうと足掻くが故に複雑な表情となった。
また、トロワの表情は変わらず、それ故にキャスリンがそれを改める様に強く指摘した。
そして、カトルは先程の驚きを上手く隠していたが、仮面の様な笑みを見せるドロシーよりは読みやすい表情だった。
それから、五飛はリリーナの短い挨拶へ答えるように無言で頭を軽く下げた。
その様な神子達の態度が想定通りだったヒイロは挨拶を切り上げようとした。
「自己紹介はこれくらいで良いだろう。後は改めてする方が良い」
「そうですね。京からこの集落へ移動されただけでも、かなりお疲れでしょうから」
「なら、今日は通常の務めに戻る方が良いだろう」
とトロワがリリーナを気遣うカトルの意見に同意すると、何故かヒイロは明らかに不機嫌となった。
だが、ヒイロが不機嫌になった事も、務めという言葉の意味もわからないリリーナは、ただ疑問を言葉にして問いかけた。
「務め、ですか?」
「その事も後で教える。とりあえず、巫女達に先導させる女房を用意させるから、これから住む屋敷まで行け。そして、その屋敷で巫女達からここでの暮らし方を聞きながら挨拶も済ませろ」
「では、ヒイロ達はどうするのですか?」
「これから新しい巫女を迎えた為の話し合いになる。今日は通常の務めは休みだ」
そうヒイロがこれからの予定を口にすると、デュオは何故か嬉しそうに集落へ戻った。
「じゃあ、俺は先に帰るから後は任せた」
「その道はお前の屋敷への近道だろ!」
と五飛から言われてもデュオが止まらなかった為、五飛はデュオの後をすぐに追った。
また、その様な二人の言動が日常であったが故に、トロワとカトルは冷静に場を判じた。
「デュオは五飛に任せるとするか」
「そうですね。僕達は先に行って準備をしますから、ヒイロはゆっくりでも良いですよ」
そうカトルから気遣われた、否、思いを見抜いていると感じたヒイロは無言で睨んだ。
その様なヒイロの厳しい視線に慣れているカトルは苦笑いながらもリリーナに頭を下げてから屋敷に向かった。
その様なカトルの礼に再び礼で答えたリリーナは、まずヒイロへの感謝を言葉にした。
「ありがとう、ヒイロ」
「……礼を言う必要はない」
「ですが、私が迷い子を見送る事を見守ってくださいましたから」
というリリーナの言葉は、初めて遭遇した時から変わらぬ言葉だったが、ヒイロはある感情に気付いた。
否、東宮からリリーナが黄龍の巫女となる経緯を知らされていたが故に、ヒイロは再確認を求めるように率直な問いを言葉にした。
「……養父も殺したその力がそんなに嫌いか?」
そうヒイロから問われたリリーナは、今までの愛想が嘘の様な無表情でただ肯定した。
「ええ、とっても」
「そうか」
「では、先導して頂ける女房がいらしたので、これから屋敷へ行きます」
とリリーナがヒイロからの追及を逃れるように、ただ案内役の女房に頭を下げた。
また、リリーナに確認以外で問うつもりがないヒイロも、ただ今後の指示を言葉にした。
「住む屋敷は同じになる。その他の決まり事は巫女達から聞け」
「ええ。わかりました」
そうヒイロに答えたリリーナは、案内役である女房の案内に従って屋敷へと向かった。
そして、それを見送ったヒイロは、リリーナの力の残滓を消す様な後始末を行ってから、神子達が待つ屋敷へと向かった。